AI ONEの75%に12億円 ── エフ・コードの半期報告書では、現金の取得対価が22億5,000万円
| 発表日 | 2026年2月10日(株式の取得・連結子会社化は2月24日) |
| 譲受企業 | 株式会社エフ・コード(東証グロース 9211) |
| 譲渡企業 | 株式会社AI ONE(2024年2月設立・横浜市西区) |
| 事業 | 個人向けAIスクール「AI ONE」の運営 |
| 譲渡価額 | 12億円(発表時の株式代金・議決権75.0%)。半期報告書の取得の対価は22億5,000万円 |
| スキーム | 現金対価の株式譲渡。売主は個人1名。残る25%は売主が持つ |
| 出典 | エフ・コード 適時開示(2026年2月10日)・有価証券報告書(2026年3月30日)・半期報告書(2026年8月14日) |
(出典:株式会社AI ONE 公式サイト サービスページ・2026年10月16日時点の画面)
譲渡企業の概要
AI ONEは、個人向けのAIスクールを運営する会社です。2024年2月27日設立、資本金500万円。取得前の株主は代表取締役の森谷和正氏が100%(適時開示)。スクールの開校は2025年3月で、発表の11か月前です(AI ONEのプレスリリース)。
| 決算期 | 2024年12月期(設立〜12月) | 2025年12月期(見込み) |
|---|---|---|
| 売上高 | 0 | 2億7,500万円 |
| 営業利益 | 0 | 2億4,600万円 |
| 当期純利益 | 0 | 1億5,800万円 |
開示は2期分で、2期目は発表時点の見込み、数字は単体です。営業利益率は89%で、講師・サポート・集客の費用がどこで負担されているかは、開示にありません。
AI ONEは連結子会社ONEを持ちます。AI ONEグループ全体の想定は、年間売上約15億円以上、営業利益約4.9億円以上(決算説明資料)。単体の見込み売上2億7,500万円との差の内訳は、開示にありません。
何で稼いでいるか
稼ぎの中心は、個人に向けたスクールの運営です。エフ・コードの決算説明資料は「AIに特化したtoCのスクール事業」と書きます。有価証券報告書は、教育に加えてAIツールの導入支援などのコンサルティングも挙げますが、売上の内訳は開示にありません。
公式サイトのサービスページは、入会審査フォームと講師面談を通った人だけが入会できる「完全審査制」と説明します。2025年4月のプレスリリースは、週1回のオンライン勉強会を挙げます。料金は、確認した公式サイトのページと発表資料に載っていません。受講者数は、エフ・コードが累計5,000人以上、AI ONEが「1,000名以上」と書き、数え方は開示にありません。
子会社ONEは、決算説明資料のグループ会社一覧で「コマーススクール事業」です。AI ONEのプレスリリースは、代表が運営する物販スクール「物販ONE®」の受講生が3,000名を超えると書きますが、ONEと同じ事業かは開示にありません。
譲受企業の概要
エフ・コードは、デジタルマーケティング支援から出発し、M&Aで広げてきた会社です。M&Aはこれまでに27件です(決算説明資料・2026年8月)。2026年12月期の上期は売上収益82億円、営業利益16億4,638万円。連結資産300億円のうちのれんが132億円で、資本合計51億円の2.6倍です(半期報告書・2026年6月末)。IFRS(国際会計基準)で連結財務諸表を作っています。
M&Aの目的・背景
取得の狙いは、AIスクールを、グループのマーケティング・Web制作・スクール運営と組み合わせることです。有価証券報告書は、AI ONEの教育とコンサルティングのノウハウに、グループのマーケティング・Web制作・スクール運営の知見を融合させ、AI導入から運用、人材育成までを一体で提供する体制を強める、と書きます。
決算説明資料は、グループ内のスクール事業(SAKIYOMI、BUZZ、Real us、デイトラ、ブイスト)との相乗効果を挙げ、教育領域での事業の深掘りを速める取得と位置づけます。売主側の事情は開示になく、AI ONEのプレスリリース(2026年2月25日)は、代表をはじめ現経営陣が引き続き経営にコミットすると書きます。
M&Aの手法・成約内容
対価は現金で、株式交換は使っていません。取締役会決議と契約は2026年2月10日、実行は2月24日。取得は375株(議決権75.0%)で、売主はエフ・コードと資本・人的・取引の関係がない森谷和正氏です。
| 項目 | 開示の内容 |
|---|---|
| 支払いの時期 | 実行日に15億円。残り7億5,000万円は2029年11月末までに段階払い(半期報告書。残額は当社計算) |
| 価格の調整 | 誓約事項と業績進捗に応じ、追加対価の支払いまたは取得対価の減額(適時開示・有価証券報告書) |
| 残り25% | 売主が持つ。残余株式を段階的に取得する取り決めがあり、時期と価格は開示にありません |
| 売主の再投資 | AI ONEの経営陣は、譲渡対価の一部でエフ・コード株を取得する意向(適時開示) |
| 資金 | 銀行融資。2026年上期の4件すべて(決算説明資料) |
| 助言費用等 | 概算5,100万円(発表時)。実績4,741万円(半期報告書) |
この値段は、どう説明できるか
発表の株式代金12億円は、100%換算で16億円。2025年12月期見込みの営業利益の6.5年分、調整後営業利益の5.7年分以下です。75%の代金を0.75で割った当社試算です。エフ・コードは算式を開示しており、調整後の年間営業利益(約2.8億円以上)に約5年の回収期間をおき、買収時点の純資産などを加味した想定企業価値へ、取得する持分比率を掛けて決めたと書きます(適時開示・決算説明資料)。調整後は、蓋然性の高い事業成長や削減できる費用などを保守的に反映した、当社でいう利益修正後の営業利益です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 株式の代金(議決権75.0%分・発表時) | 12億円 |
| 会社全体の評価額(100%換算) | 16億円 |
| 2025年12月期(見込み)の営業利益 | 2億4,600万円 |
| 100%換算 ÷ 営業利益 | 6.5年分 |
| 100%換算 ÷ 調整後営業利益(約2.8億円以上) | 5.7年分以下 |
半期報告書の取得の対価は現金22億5,000万円で、100%換算は30億円です。発表時の株式代金12億円と並べると10億5,000万円多く、差の理由は、確認した適時開示・有価証券報告書・半期報告書・決算説明資料に書かれていません。100%換算の30億円は、決算説明資料がAI ONEグループの事業価値として示す「概ね30億円」と同じ額です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 現金(議決権75%分) | 22億5,000万円 |
| 誓約事項に関する補償(買い手が受け取る権利) | △2億8,332万円 |
| 取得対価の合計 | 19億6,668万円 |
| 非支配持分(買い手以外が持つ25%分) | 1億7,203万円 |
| 受け入れた純資産 | 6億8,813万円 |
| のれん(暫定) | 14億5,059万円 |
のれんは、取得対価と非支配持分の合計から、取得日に受け入れた純資産を引いた額です(当社計算で開示と一致)。AI ONEグループの想定営業利益(約4.9億円以上)で割ると3.0年分以下で、100%換算30億円を同じ利益で割ると6.1年分以下です。当社が集計したEC・D2C8件では、のれんが営業利益の1.3〜10.2年分、中央値5.0年でした(のれんとは何か ── 「営業利益の何年分か」で買いすぎを見抜く)。AI ONEは実績でなく想定の利益で割っているため、並べるときは差を見込みます。
実際に計上されたのれんと、その後
IFRSでは、のれんを償却しません。償却年数はなく、毎期の減損テストで、価値が下がれば損失を計上します(有価証券報告書の会計方針)。取得原価の配分は暫定で、取得日から1年は修正されることがあります。半期報告書では、追加対価(条件付対価)は「―」で、補償だけが計上されています。補償の上限はなく、6月30日までに支払われた補償はありません。
取得日から6月末までの約4か月で、AI ONEグループの売上収益は10億7,783万円、中間利益は2億2,711万円。想定の年間売上(約15億円以上)の約7割に達しました。
買い手が読み取れること
発表の金額は、何の金額かを確かめてから使います。M&A情報サイトの「12億5,100万円」は、株式代金12億円に助言費用等の概算5,100万円を足した総額です。半期報告書の現金の取得対価22億5,000万円は別の数字で、いずれも議決権75%分。当社(CommerceX M&A)は、金額に出所と日付を付けて扱い、株式だけの額か、費用や後払いを含む額かを分けます。
「AI」の名前より、売上の出どころで値段を見ます。売上は個人向けスクールで、単体の数字は設立2期目の見込みです。確かめるのは、受講者の在籍数、1人あたりの支払額、継続と返金、集客の流入元、講師とサポートの費用の所在。グループの契約負債(サービス提供前に受け取った代金にあたる負債)は半期で約20億円増え、主な要因は新規連結子会社の取得日に引き受けた負債でした。AI ONE分の内訳は開示にありません。
後払いと業績調整は、払う額を後から動かす仕組みです。先に15億円、残りは2029年11月末まで。業績進捗で額が変わる条件もあります。当社の見解では、後払いは取得後に実現する数字に連動させ、連動の指標・期間・上限は基本合意の段階で決めます。後から足すと揉めるためです。
残り25%と売主の役割は、取得と同時に決めます。経営陣は残り、譲渡対価の一部でエフ・コード株を買う意向です。当社の見解では、前オーナーを残す場合、役割を責任者かアドバイザーかに決め、伴走する自社側の責任者を初日から置きます。
のれんの会計は、買い手の会計基準で結果が変わります。IFRSなら14億5,059万円は償却されず、減損が出るまで利益に現れません。日本基準の会社が同じ値段で買えば、毎年の償却費が営業利益を押し下げます。値段を比べるときは、会計基準を揃えます。
よくある質問
Q. エフ・コードは、AI ONEをいくらで買ったのですか。
A. 発表の株式代金は12億円(議決権75.0%)、助言費用等の概算5,100万円を足した総額が12億5,100万円です。半期報告書の取得の対価は現金22億5,000万円で、うち15億円は2026年2月24日に支払い、残りは2029年11月末までの段階払いです。差の10億5,000万円の理由は、確認した開示に書かれていません。
Q. 営業利益の何年分ですか。
A. 発表の12億円は100%換算16億円で、見込みの営業利益2億4,600万円の6.5年分、調整後営業利益(約2.8億円以上)の5.7年分以下。半期報告書の22億5,000万円は100%換算30億円で、グループの想定営業利益(約4.9億円以上)の6.1年分以下です。
Q. のれんの償却は何年ですか。
A. 償却しません。エフ・コードはIFRSで連結しており、のれんは毎期の減損テストで価値を確かめます。AI ONEののれんは暫定14億5,059万円です。
Q. AI ONEは、何で稼ぐ会社ですか。
A. 個人向けのAIスクールの運営です。入会は審査制で、質問やプロンプト共有のグループ、週1回の勉強会を提供します。料金とスクールの売上の内訳は開示になく、子会社ONEはコマーススクール事業を営みます。
ご相談ください
エフ・コードは、AI ONEを調整後営業利益の約5年分の式で値付けし、代金の一部を2029年まで後払いにしました。
CX BASEは、EC・小売・D2C領域の譲渡案件を扱っています。買収のご相談をいただいた企業には、条件に合う案件を公開前にご案内します。
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出典
- 株式会社エフ・コード「株式会社AI ONEの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」(2026年2月10日公表・2026年10月16日確認)
- 同「2025年12月期 通期 決算説明資料」(2026年2月13日公表)、「2026年12月期 第2四半期 決算説明資料」(2026年8月14日公表)(いずれも2026年10月16日確認)
- 同「有価証券報告書 第20期(2025年12月期)」(2026年3月30日提出・重要な後発事象、事業等のリスク、会計方針)、「半期報告書 第21期中(2026年6月期)」(2026年8月14日提出・企業結合、金融商品の公正価値、財政状態)(いずれも2026年10月16日確認)
- 株式会社AI ONE「新サービス『AI ONE』をリリース」(2025年4月17日)、「株式会社エフ・コードグループへ参画」(2026年2月25日)(いずれもValuePress掲載・2026年10月16日確認。題名は一部省略)
- 株式会社AI ONE 公式サイト サービスページ(2026年10月16日確認)
- M&A Online「エフ・コード、AIスクール運営のAI ONEを子会社化」(2026年2月10日・2026年10月16日確認。「12億5,100万円」の報道の確認用)
(12億円は発表時の株式の取得価額で、12億5,100万円は助言費用等の概算5,100万円を足した報道の数字。22億5,000万円は半期報告書の現金の取得対価で、残り7億5,000万円は15億円との差の当社計算。100%換算・倍率・年数・のれんの検算も当社試算。2025年12月期は発表時点の見込みで単体の数字。純資産は開示の表の中で整合が取れず載せていない。想定値の「約」「以上」は開示の表現のまま、千円単位は万円に四捨五入)