ADWAYS CHINA・ADWAYS ASIAに2円 ── 売主のアドウェイズは、買い手の新株2億882万円分も引き受けた
| 発表日 | 2026年4月30日(契約。基本合意は2025年12月16日、株式の取得は2026年5月1日) |
| 譲受企業 | 売れるネット広告社グループ株式会社(東証グロース 9235) |
| 譲渡企業 | 愛徳威広告(上海)有限公司〈ADWAYS CHINA〉(2007年設立・上海)/ADWAYS ASIA HOLDINGS LIMITED〈ADWAYS ASIA〉(香港)。売主は株式会社アドウェイズ(東証スタンダード 2489) |
| 事業 | 中国・香港のインターネット広告(ブランド広告・アプリ広告・ライブコマース支援) |
| 譲渡価額 | 2円(各社1円・持分と議決権の100%) |
| スキーム | 株式取得(現金)。ADWAYS ASIAの広告以外の事業は、実行日までに別の子会社へ移す予定 |
| 出典 | 売れるネット広告社グループ・アドウェイズの適時開示(2025年12月16日・2026年4月30日)、売れるネット広告社グループ 2026年7月期決算短信(2026年9月14日) |
(出典:売れるネット広告社グループ株式会社 公式サイト(group.ureru.co.jp)・2026年10月16日時点の画面)
譲渡企業の概要
対象は、アドウェイズが中国と香港に持っていた広告会社2社です。ADWAYS CHINAは2007年2月設立の上海の会社、ADWAYS ASIAは香港の会社です。ADWAYS ASIAの広告以外の事業は、実行日までに別の子会社へ移す予定で、譲渡の対象は広告事業に限られます。
ADWAYS CHINAの3期分は次のとおりです(12月期)。
| 項目 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 取扱高 | 13億6,500万円 | 8億3,100万円 | 7億8,600万円 |
| 売上高 | 7億200万円 | 4億5,900万円 | 5億600万円 |
| 営業利益 | 5,800万円 | △7,900万円 | △1,700万円 |
| 純資産 | 1億4,200万円 | 4,200万円 | 2,500万円 |
ADWAYS ASIAは、譲渡の対象部分だけが開示されています(会社の試算で未監査)。2024年12月期は売上高2億400万円、経常利益4,700万円、純資産△5,100万円。2025年12月期は売上高2億8,400万円、経常利益2,700万円、純資産400万円です。
ADWAYS CHINAの取扱高は2年で42.4%、純資産は82.4%減りました。営業損益は2023年の黒字から2025年は赤字です。ADWAYS ASIAの対象部分は、2025年末の純資産が400万円と薄く、経常利益は42.6%減りました。2025年12月期の経常損益は、ADWAYS CHINAの赤字2,000万円とADWAYS ASIAの対象部分の黒字2,700万円で、合わせて700万円の黒字です(当社試算)。買い手の補足説明資料が示した経常利益7百万円の黒字と一致します。
譲受企業の概要
売れるネット広告社グループは、福岡市に本社を置く東証グロース上場の会社で、広告・マーケティング支援、自社ブランドのEC、モバイル通信機器のレンタル、デジタルアセットの事業を手がけます。2025年7月期は売上高15億6,700万円、営業損失1億6,700万円。売主の開示によれば、2026年1月末の純資産は7億2,400万円です。
取得後の2026年7月期は、売上高16億6,100万円、営業損失5億4,300万円、親会社株主に帰属する当期純損失11億700万円で、7月末の純資産は9,200万円です。決算短信は、3期連続の営業損失などから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象または状況が存在すると記しています(重要な不確実性は認められないと判断)。
M&Aの目的・背景
買い手の狙いは、中国市場で現地のネットワークと顧客を持つ事業を、立ち上げずに取得することです。越境ECとグローバル展開を成長戦略の中核に置き、中国のEC・SNS・ライブコマースでマーケティング支援を広げる。売主は、買い手との組み合わせで事業機会が広がると説明し、譲渡後も連携を保つ方針です。
M&Aの手法・成約内容
代金は2社で2円、取得日は2026年5月1日です。買い手は2026年4月30日に決議して契約し、ADWAYS CHINAの持分100%を1円、ADWAYS ASIAの1,000,000株(議決権100%)を1円で取得しました。デュー・ディリジェンス(買収前の調査)の費用は300万円で、代金より費用のほうが大きい取引です。
基本合意(2025年12月16日)の時点では、契約を2026年3月、実行を4月と見込み、取得価額を買い手の直前期末の連結純資産6億7,700万円の15%以下(約1億200万円以下・当社試算)と見ていました。結果は各1円で、契約は予定より遅れました。
売主のアドウェイズが2円で手放した事情
売主は、2社を持ち続ける価値は限定的と判断しました。アドウェイズの2026年4月30日の開示は、ADWAYS CHINAの継続的な赤字と純資産の減少傾向、ADWAYS ASIAの利益水準の低下傾向を挙げます。2社は一体で運営し互いに補い合うため、一体で譲渡するのが合理的で、協議の結果が各1円です。
売主の2025年12月期の決算短信は、中国で日中関係を背景に日本製品への消費マインドが下がり、ブランド広告の需要が減ったと説明し、中国では事業構造の最適化を進めてEC事業に注力する方針でした。債務超過や撤退という言葉は売主の開示になく、ADWAYS CHINAの2025年末の純資産は2,500万円のプラスです。売主は単体で約6億4,100万円の特別損失を計上し、連結業績への影響は軽微で、2026年2月公表の予想に含めてあると説明しました。
買い手は同じ4月30日に、売主を割当先とする新株の発行も決議しました。397,000株を1株526円、総額2億882万円で、払込は5月18日に完了。発行後のアドウェイズの持株比率は4.90%で、中長期で保有する意向です。買い手は、基本合意のあとに成長資金が必要と判断し、アドウェイズへ資本参加を打診して賛同を得たと説明します。アドウェイズの同日の開示に、この引受けの記載はありません。どちらの開示も、この引受けを各1円の価格と結びつけて説明していません。
この値段は、どう説明できるか
代金の2円は、受入純資産がほぼゼロの会社の値段として説明できます。取得日の資産と負債は、決算短信の企業結合注記に載っています。
| 項目 | ADWAYS CHINA | ADWAYS ASIA | 合計 |
|---|---|---|---|
| 取得の対価 | 1円 | 1円 | 2円 |
| 受け入れた資産 | 2億3,400万円 | 6億9,800万円 | 9億3,200万円 |
| 引き受けた負債 | 2億3,200万円 | 6億9,800万円 | 9億3,000万円 |
| うち流動負債 | 8,600万円 | 6億9,800万円 | 7億8,400万円 |
| うち固定負債 | 1億4,500万円 | なし | 1億4,500万円 |
資産と負債の差は200万円で、負ののれん発生益は100万円です(四捨五入のため一致しません)。買い手は4月30日の開示で特別利益に計上する見込みと説明しましたが、決算短信(監査前)の額は100万円で、のれんは出ていません。受け入れた資産と負債は、10月26日に提出予定の有価証券報告書で変わることがあります。
契約時の開示の純資産は2社の合計で2,900万円、取得日の受入純資産は200万円。基準日が違い、差の理由は開示にありません。利益の物差しは使えません。時価純資産に営業利益の1〜3年分を足す年買法も、赤字なら純資産と同じ200万円程度です(当社試算)。
代金の外にある資金
実際に出ていく資金は、代金の外にあります。買い手は第三者割当の開示で、手取り2億560万円の使途を、主にこの2社への成長資金と説明しました。内訳は、広告配信の先行投資が約8,000万円、営業キャッシュ・フローが一時的に赤字になる最大値が約1億1,700万円、人材採用が約400万円、資金余力が約400万円。出資のほか、必要に応じた貸付なども含みます。
買い手が読み取れること
株式の代金が2円でも、払える上限は引き受ける資金負担で決まります。受け入れた負債9億3,000万円は、買い手の2026年1月末の純資産7億2,400万円の1.28倍。流動負債7億8,400万円が流動資産7億6,000万円を上回り、流動比率は97%です(当社試算)。当社(CommerceX M&A)は、対象の事業だけの価値と、自社に入れた後の価値を分けて持ち、払うのは前者までを基本にします。2円は前者の値段で、中国市場への参入基盤という買い手の説明は後者です。後者を見込むなら、先行投資と運転資金を代金とは別に計画へ入れます。
取扱高と黒字は、会社単体か対象事業の合算かを先に確かめます。基本合意の開示は、対象事業の2025年12月期の見通しを、取扱高36億円、営業利益1,800万円の黒字としました。契約時の見出しは33億円。ADWAYS CHINA単体は、取扱高7億8,600万円、営業損失1,700万円です。買い手の6月25日の開示は、ADWAYS CHINAを取扱高約36億円規模で営業利益が黒字の会社と紹介します。売上高はADWAYS CHINAとADWAYS ASIAの対象部分を足すと7億9,000万円で、取扱高33億円の24%です(当社試算)。基本合意の見通しの売上高(売上総利益)5億2,000万円と、定義が同じかは分かりません。当社は、開示の数字を会社単体と対象事業の合算に分けて混ぜず、取扱高が総額か手数料収入かを契約書と帳簿で確かめます。
売主が事業会社なら、親会社に頼る部分を先に洗い出します。売主の開示は、売主が2社から広告配信業務を受託し、両社で売主の従業員2名が役員を兼ね、1名がADWAYS CHINAへ出向していると書きます。譲渡後も連携を維持するとありますが、契約の条件と従業員数は開示にありません。当社は、業務・人・資産・契約・システムの5つに分けて洗い出し、配信の担い手と、媒体との契約の名義を最初に見ます。
引き継ぐ顧客の需要が何に左右されるかを確かめます。売主は、日本製品への消費マインドが下がってブランド広告の需要が減ったと説明しました。買い手は6月4日の開示で、ADWAYS CHINAのこれまでの主な顧客は中国に進出した日系企業の現地法人だったと書き、日本国内の企業向けの中国進出支援を6月に始めました。主な顧客が日系企業の現地法人なら、売主が挙げた需要の落ち込みは引き継ぐ売上にもかかります。顧客別の売上と直近の月次の取扱高を確かめます。
買った後の成果は、連結の数字から切り出せません。2社は2026年5月から買い手の連結に入り、決算短信は2社の売上と利益を単独で示しません。2027年7月期の計画(売上高50億400万円)で、2社はほかの新規連結の会社や新会社と同じ区分に入り、その区分は売上高32億8,000万円・営業利益3億300万円(本社費などの控除前)です。買収の前に、2社単独の取扱高・売上総利益・営業利益を追う指標に決めます。
よくある質問
Q. 各社1円で買えたのは、安く買えたということですか。
A. 株式の代金だけなら安く、受入純資産は約200万円、負ののれん発生益は100万円です。ただし買い手は、運転資金などの追加資金2億500万円を見込んでいます。
Q. 負ののれんとは何ですか。
A. 取得の対価が、受け入れた資産と負債の差額(時価純資産)を下回るときの差額です。この事例は100万円で、買い手は特別利益に計上する見込みと開示しました。
Q. 株式で買うと、対象会社の負債はどうなりますか。
A. 負債は会社に残り、買い手は9億3,000万円を引き継ぎました。買い手の責任は原則として出資額までですが、貸付や保証を出せばその分は別で、この事例の買い手は貸付も想定しています。
Q. こうした案件は、どこで見つかりますか。
A. 公表されるのは、買い手が上場企業で、開示した取引に限られます。CX BASEでは、買収のご相談をいただいた企業へ、条件に合う譲渡案件を公開前にご案内しています。
ご相談ください
代金が2円の取引でも、値段は、引き継ぐ貸借対照表と、その後に必要な資金で決まります。
CX BASEは、EC・小売・D2C領域の譲渡案件を扱っています。買収のご相談をいただいた企業には、条件に合う案件を公開前にご案内します。
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出典
- 売れるネット広告社グループ株式会社の適時開示:基本合意書締結(2025年12月16日)、株式譲渡契約締結・第三者割当による新株式発行・補足説明資料(2026年4月30日)、臨時報告書(2026年5月7日)、払込完了(2026年5月18日)、中国進出支援の2件(2026年6月4日・25日)、業績予想の修正(2026年9月7日)、決算短信(2026年6月12日・9月14日)
- 株式会社アドウェイズの適時開示:基本合意書締結(2025年12月16日)、株式譲渡契約締結と特別損失(2026年4月30日)、臨時報告書(2026年5月1日)、決算短信(2026年2月10日・5月7日)
- 売れるネット広告社グループ株式会社 公式サイト(group.ureru.co.jp)トップページ
(上の資料はいずれも2026年10月16日確認。金額は株式の代金2円です。資産・負債・負ののれん発生益は決算短信(監査前)の企業結合注記で、百万円未満を四捨五入した値です。ADWAYS ASIAの対象部分は会社の試算で未監査。流動比率・倍率・合計・上限は当社試算です)