M&Aニュース2023年1月 実行書き手:齋藤 浩喜

Brewtope(旧meuron)に1億3,600万円 ── 債務超過のクラフトビール定期便を、ギフティは売上の約2倍で買い増した

発表日2023年1月18日(取締役会決議と契約。株式の追加取得は2023年1月25日)
譲受企業株式会社ギフティ(東証プライム 4449)
譲渡企業meuron株式会社(現Brewtope株式会社・2014年10月設立・東京都豊島区〔当時〕)
事業クラフトビールの定期便「Otomoni」の運営、飲食店・企業向けのクラフトビール販売
譲渡価額1億3,600万円(追加取得した49.00%・現金)。取得前の保有は14.94%、取得後は63.94%
スキーム株式の追加取得による連結子会社化。売り手は投資ファンド・法人・個人の11者
出典ギフティ 適時開示(2023年1月18日)・第14期有価証券報告書

Brewtope 公式サイト (出典:Brewtope株式会社 公式サイト・2026年10月16日時点の画面)

譲渡企業の概要

meuronは、全国のブルワリーのクラフトビールを定期便で届ける「Otomoni」を運営する、2022年7月期の売上高1億4,200万円・営業損失8,900万円の会社です。2014年10月の設立で、代表取締役は金澤俊昌氏。ギフティの発表によると、国内280社以上のブルワリーと連携し、2,000銘柄以上のクラフトビールを提供していました。2024年10月に、社名をBrewtopeへ変更しています。

決算期(7月期)2020年7月期2021年7月期2022年7月期
売上高6,200万円8,100万円1億4,200万円
営業利益△1,900万円△6,100万円△8,900万円
純資産1,200万円1,700万円△6,600万円

売上高は2年で2.3倍、営業損失は1,900万円から8,900万円へ4.7倍に広がりました。2022年7月期の純資産は△6,600万円の債務超過で、1株あたり純資産は△250.26円です。この表は2022年7月期までで、2023年7月期の数字は開示にありません。

譲受企業の概要

ギフティは、eギフト(飲食・小売店舗などで商品やサービスと交換できる電子チケット)の発行から流通までを担う、東証プライムの会社です。2010年8月の設立で、meuronを連結に入れた2023年12月期の連結売上高は72億2,600万円、営業利益は12億6,700万円です(有価証券報告書)。

M&Aの目的・背景

狙いは、法人向けギフトにクラフトビールを加えることと、すでに続けてきた提携をグループの事業にすることです。ギフティの発表は、リモートワークとオンラインセミナーの広がりで、従業員向け(BtoE)と企業間(BtoB)のギフトの需要が増え、2022年10月に法人向けの「Corporate Gift」を始めたと書いています。meuronを加えて、Corporate Giftでクラフトビールの需要を取り込み、グループ一体で相乗効果を出すのが取得の理由です。

ギフティは2021年6月にmeuronの株式14.9%を取得しました(meuronの第三者割当増資の引き受け)。業務提携のあとは、自社のeギフトの仕組みでクラフトビールを販売・流通してきました。開示に、自社で品揃えを作る案と比べた記述はありません。

M&Aの手法・成約内容

取得は、先に持っていた14.94%に49.00%を足して63.94%にする1回で、meuronはギフティの連結子会社になりました。

時点出来事議決権比率
2021年6月meuronの第三者割当増資を引き受け14.94%
2023年1月25日売り手11者から131,150株(49.00%)を現金で取得63.94%
2023年3月31日みなし取得日。支配獲得後の増資の引き受けで比率が上がる(損益の連結は2023年4月から)69.18%

売り手は、投資ファンドの組合4本、法人3社、個人4名の11者です。最大は投資ファンドの組合で、取得分の25.9%(34,000株)です。創業者の金澤氏は売り手に含まれません(取得前の持株比率は35.68%)。取得直後に残る36.06%の大半が創業者の持分です。

取得価額は、株式代金1億3,600万円にアドバイザリー費用等の概算500万円を加えた1億4,100万円と開示されました。有価証券報告書では、費用は300万円で確定しています。評価の方法と算定機関、残りの株式を後で売買する取り決めの記載はありません。

この値段は、どう説明できるか

値段は100%換算で約2億8,000万円、1株あたり約1,040円で、直前期の売上高の約1.95倍です。株式代金1億3,600万円を取得比率49.00%で割ると2億7,755万円になります(当社試算)。

項目内容
株式代金(49.00%・131,150株)1億3,600万円
1株あたり(当社試算)約1,040円
100%換算(当社試算)約2億8,000万円
2022年7月期の売上高1億4,200万円
売上高に対する倍率約1.95倍

先に持っていた14.94%は、企業結合日の時価が4,100万円で、100%に直すと約2億7,400万円です。追加取得と同じ水準の評価です。

営業損失と債務超過の会社に、利益の何年分も純資産の何倍も使えません。使えるのは売上高の倍率です。1株あたり純資産△250円の会社の株に、1株約1,040円が付いています。

実際に計上されたのれんと、その償却

のれんは2億9,700万円で、取得原価の1.7倍です。7年の均等償却で、年4,240万円が費用になります。有価証券報告書の注記から、払った額とのれんを並べます。

項目金額備考
追加取得した49.00%の現金1億3,600万円
先に持っていた14.94%の時価4,100万円企業結合日
取得原価1億7,700万円上の2つの合計
取得後に引き受けた増資4,700万円取得原価の別枠
受け入れた資産・引き受けた負債1億1,900万円・1億9,100万円純資産は△7,200万円
のれん2億9,700万円7年の均等償却。発生原因は「将来の超過収益力」
取得のための純支出(キャッシュ・フロー計算書)7,000万円受け入れた現預金1億1,200万円を差し引いたあと

のれんが払った現金を上回る理由を、有価証券報告書は書いていません。取得原価に先の14.94%の時価が入り、受け入れた純資産が△7,200万円であることから、マイナスの純資産がのれんを押し上げたと読めます(当社の読み)。キャッシュ・フロー計算書の注記は、資産とのれんの合計から負債を引いた2億2,500万円を「株式の取得価額」とし、取得後の増資4,700万円がここに含まれると書いています。年4,240万円の償却は、ギフティの2023年12月期の連結営業利益12億6,700万円の3.3%です。

買い手が読み取れること

債務超過の会社の値段は売上の倍率で決まり、その倍率は損失が広がる年の売上に付きました。売上高の約1.95倍は、売上が75%伸びた2022年7月期の数字です。同じ期に営業損失は6,100万円から8,900万円へ広がっています。自社で同じ判断をするなら、売上の増加が広告費や仕入の増加と引き換えだったかを粗利で確かめます。粗利は開示にありません。

出る現金は、株式代金より大きくなります。1億3,600万円のほか、3月末までに4,700万円の増資を引き受け、費用が300万円かかり、合計は1億8,600万円です。ギフティが2021年6月に払った14.94%の取得額は、確かめた開示に見当たりません。当社(CommerceX M&A)の見解では、債務超過の会社の買収は、株式代金に取得後に入れる資金を足して「出る現金」を決めます。

定期便の買収では、売上の中身を先に確かめます。会員数(開示なし)、継続月数、仕入先のブルワリーとの契約、酒類の販売の免許と管理者の体制が対象です。2024年1月〜10月の平均月間退会率は2%台です(Brewtopeの2024年12月の発表。定義と算式は開示にありません)。

売り手が11者に分かれ、創業者が残る形では、役員の配置と契約の窓口を先に決めます。創業者の金澤氏は、2024年12月も代表取締役社長です(Brewtopeの発表)。ギフティは取得の翌月に、代表取締役COOをmeuronの取締役に送りました。当社の見解では、創業者を社長に残す買収は、伴走する自社側の取締役を取得の直後に置きます。売り手が11者になると契約の当事者も11者になるため、表明保証や補償の請求先も価格と別に交渉します。

買った後の費用は、のれんの償却です。減損の記載は見当たりません。のれんは年4,240万円を7年間、費用にします。2023年12月期から2025年12月期の有価証券報告書に、Brewtopeののれんの減損の記載はありません。

取得から約2年で、ギフティの持分は過半を割りました。ギフティの議決権の所有割合は、2024年12月期の69.18%から2025年12月期の46.84%に下がり、連結キャッシュ・フロー計算書に非支配株主からの払込み2億円が出ています。有価証券報告書は、これが何の払込みかを書いていません。同じ2025年4月にBrewtopeが外部の投資家から約2億円を調達したと報じられており(THE BRIDGE)、これが同じ増資なら、外部の資金で持分が下がったことになります。過半を割っても連結子会社のままで、その根拠は記載がありません。

よくある質問

Q. ギフティは、meuron(現Brewtope)をいくらで買ったのですか。

A. 適時開示は、追加取得した49.00%(131,150株)の株式代金を1億3,600万円、アドバイザリー費用等の概算を500万円と記載しています。100%換算は当社試算で約2億8,000万円、2022年7月期の売上高の約1.95倍です。

Q. 債務超過の会社に、なぜ値段が付くのですか。

A. 開示が挙げる理由は、「Corporate Gift」でクラフトビールの需要を取り込むことと、280社以上のブルワリーとの連携、2,000銘柄以上の品揃えです。純資産が△6,600万円のため、物差しは売上の倍率と、同じ品揃えを自社で作る費用と時間です。作る場合との比較は、開示にありません。

Q. 先に14.94%を持ってから買い増す進め方は、買い手に何がよいのですか。

A. 買う前に、取引の実績を内側から確かめられます。ギフティは2021年6月の出資から約1年7か月、自社のeギフトでクラフトビールを販売・流通したあと、49.00%を買い増しました。

Q. 買った後に、のれんの減損はありましたか。

A. 有価証券報告書(2023年12月期〜2025年12月期)に、Brewtopeののれんの減損の記載はありません。のれんは2億9,700万円で、7年の均等償却により年4,240万円が費用になります。

ご相談ください

ギフティは、先に14.94%を持ち、約1年7か月の提携を続けてから、純資産がマイナスの会社を連結に入れました。

CX BASEは、EC・小売・D2C領域の譲渡案件を扱っています。買収のご相談をいただいた企業には、条件に合う案件を公開前にご案内します。

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出典

  • 株式会社ギフティ「meuron株式会社の株式追加取得(連結子会社化)に関するお知らせ」(2023年1月18日公表・2026年10月16日確認)
  • 株式会社ギフティ 第13期・第14期・第15期・第16期有価証券報告書(2023年3月28日・2024年3月27日・2025年3月27日・2026年3月27日提出・いずれも2026年10月16日確認)
  • meuron株式会社「クラフトビールのサブスク「Otomoni」がeギフトプラットフォームを展開するギフティと提携し、クラフトビールギフトを多面的に展開」(2021年11月25日公表・PR TIMES・2026年10月16日確認)
  • Brewtope株式会社「約1年分のクラフトビールが当たる、Podcastクイズ連動の販売記念キャンペーン」(2024年12月27日公表・PR TIMES・2026年10月16日確認)
  • THE BRIDGE「クラフトビール定期便「Otomoni」のBrewtope、インスパイア・インベストメントから2億円を調達」(2025年4月24日公表・2026年10月16日確認)
  • Brewtope株式会社 公式サイト(2026年10月16日確認)

(1億3,600万円は追加取得した49.00%の株式代金、4,100万円は企業結合日に評価した先の14.94%の時価で、取得原価は両者の合計です。100%換算と1株あたりの額は、金額を取得比率で割った当社試算で、開示が百万円単位のため前後1%ほどの幅があります。純資産は受入資産と引受負債の差、のれんの年額は2億9,700万円を7年で割った額です)

書き手
齋藤 浩喜さいとう ひろき
CommerceX M&A株式会社 代表取締役

2014年より輸入・EC事業で起業。8年間で海外ブランドの日本展開に注力し、累計30以上のブランドの立ち上げ日本展開を行う。

2022年に自ら立ち上げたゴルフブランドPuttOUT事業をCommerceXグループへ事業譲渡。その経験を機に、国内最大手M&A仲介会社に入社。コマース領域のM&A実務に従事した。2026年5月、CommerceX M&A株式会社を設立し代表取締役に就任。同時にCommerceXホールディングス執行役員として、EC・小売領域のM&AとAI活用を推進している。

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