RECLOに3.6億円 ── 純資産割れに見えた値段は、コメ兵の決算ではのれんが出る値段だった
| 発表日 | 2024年4月3日(取締役会決議・契約・株式譲渡の実行はいずれも同日。連結への取り込みは2024年6月30日) |
| 譲受企業 | 株式会社K-ブランドオフ(株式会社コメ兵ホールディングス〈東証スタンダード 2780〉の連結子会社) |
| 譲渡企業 | 株式会社RECLO(2021年7月設立・東京都品川区) |
| 事業 | 中古ハイブランド品の買取・販売EC「RECLO」(中国向けの越境ECを含む) |
| 譲渡価額 | 3億5,876万円(2,000株・議決権100%) |
| スキーム | 株式取得(現金)。2024年7月1日にK-ブランドオフがRECLOを吸収合併 |
| 出典 | コメ兵ホールディングス 適時開示(2024年4月3日)・有価証券報告書 第47期(2025年6月24日提出) |
(出典:株式会社コメ兵ホールディングス 公式サイトのTOPICS「株式会社RECLOがグループに加わりました」2024年4月3日・2026年10月16日時点の画面)
(出典:「RECLO」公式サイト(reclo.jp)・2026年10月16日時点の画面。販売業者は株式会社K-ブランドオフ)
譲渡企業の概要
RECLOは、中古のハイブランド品を買い取り、国内と中国へ売るEC会社です。2021年7月1日の設立で、本社は東京都品川区、従業員は48人(2024年4月時点)。2017年から中国へ展開し、開示は、中国本土最大手のECサイト「Tmall」などに個人顧客の基盤があると説明しています。国内では、他社のECモールと協力して買取を請け負っています。
開示された決算は2期分で、設立が2021年7月のため1期目は9か月です。
| 決算期(3月期) | 2022年3月期(9か月) | 2023年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 26億100万円 | 42億7,600万円 |
| 営業利益 | △1,400万円 | △3億200万円 |
| 当期純利益 | △1,600万円 | △2億2,600万円 |
| 純資産 | 11億3,200万円 | 9億600万円 |
売上高は42億円台へ増えた一方、営業損失は3億200万円へ広がり、営業損失率は7.1%。純資産は2期で2億2,600万円減りました。取得の直前、2024年3月期の決算は開示に入っていません。
譲受企業の概要
コメ兵ホールディングスは、中古のブランド品や時計の買取・販売で、2025年3月期の連結売上高が1,589億9,400万円の会社です。営業利益は61億7,600万円。取得したのは100%子会社のK-ブランドオフ(石川県金沢市)で、海外ブランドのバッグ・時計・宝石・貴金属・衣料の小売・買取・卸売やオークションを手がけています。RECLOはコメ兵ホールディングスの孫会社になります。
M&Aの目的・背景
狙いは、ブランドリユースの首位固めと、RECLOが持つ中国向けの販路・顧客基盤の取り込みです。開示は、買取・販売の競争が激しいなかで、ブランドリユース業界のトップシェアを確保し、総流通量を広げる方針を挙げています。RECLOは、Tmallなどでの個人顧客の基盤、越境ECの強み、他社ECモールと協力した買取が評価の対象です。
M&Aの手法・成約内容
代金は現金3億5,876万円で、取締役会の決議・契約・株式の取得はすべて2024年4月3日です。K-ブランドオフが2,000株(議決権の100%)を取得しました。売主はULTRA WIDE 1社で、上場会社とRECLO・売主との間の資本・人的・取引の関係は、いずれも「該当事項はありません」。取得の約3か月後、2024年7月1日にK-ブランドオフがRECLOを吸収合併しました。
有価証券報告書の取得の対価は3億5,958万8千円で、発表より82万8千円多く、差の理由は開示にありません。アドバイザリー費用等2,648万円は別に記載されています。適時開示に、評価の方法と算定機関の記載はありません。
売主のULTRA WIDEと、RECLOの持ち主が変わった経緯
売主のULTRA WIDEは、RECLOの事業を譲り受けてから約3年3か月で、子会社ごと手放しました。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2020年12月21日 | ULTRA WIDEが、当時の株式会社RECLO(東京都港区)から「RECLO」事業を譲り受け(金額の記載なし) |
| 2021年7月1日 | 会社分割で、事業を承継する新しい株式会社RECLOを設立(運営会社は8月23日から新会社) |
| 2024年4月3日 | ULTRA WIDEが100%を持つRECLOの全株式を、K-ブランドオフへ譲渡 |
ULTRA WIDEは大阪市北区の会社で、2020年12月の発表時点では不用品などの買取を運営していました。事業を譲り受けた理由は、消費者向けと中国を中心とした海外の販路の開拓で、RECLOの海外売上比率は57%を超えると説明しています。2024年4月に手放した理由は、確認できた開示にありません。
この値段は、どう説明できるか
3.6億円の代金は、発表時の純資産では0.40倍、連結に入れた時点の純資産では1.39倍です。左の列は発表時の開示(2023年3月期末)、右の列は有価証券報告書の企業結合注記の数字。100%の取得のため、会社全体の評価額は取得価額と同じです。
| 項目 | 開示の最新期で計算 | 連結に入れた時点(有報) |
|---|---|---|
| 会社全体の評価額(100%) | 3億5,876万円 | 3億5,959万円 |
| うち純資産 | 9億600万円 | 2億5,813万円 |
| 差額(のれん) | △5億4,724万円(純資産割れ) | 1億146万円 |
| 純資産の何倍 | 0.40倍 | 1.39倍 |
連結に入れた時点の純資産は、2024年6月30日(みなし取得日)に受け入れた資産6億602万円から負債3億4,789万円を引いた額です。2023年3月期末の9億600万円から6億4,787万円(71.5%)減り、内訳は開示にありません。株式を取得した4月3日の純資産も開示されていません。のれんは6月30日の純資産との差で決まるため、4月から6月に純資産が減っていれば、その分はのれんに含まれます。
営業損失が出ているため、営業利益の何年分という物差しは使えません。代金は2023年3月期の売上高の0.08倍で、売上1円あたり約8銭。受け入れた資産のうち固定資産は1,956万円(3%)で、流動資産5億8,646万円には現金2億6,829万円が含まれます。
実際に計上されたのれんと、その償却
のれんは1億146万円で、5年の均等償却。年2,029万円が費用になります。発生原因は、有価証券報告書に「今後の事業展開によって期待される将来の超過収益力」とあります。2025年3月期の連結に入ったのは6月30日の貸借対照表だけで、RECLO単体の損益は入っていません。
年2,029万円は、コメ兵ホールディングスの2025年3月期の営業利益61億7,600万円の0.3%です。営業利益1億円の会社が同じ額を買えば、約2割になります(当社試算)。
買い手が読み取れること
直近の純資産で割った倍率は、取得日の値段の説明に使えません。発表の0.40倍は、取得の1年前の純資産が分母です。連結に入れた時点では1.39倍で、のれんは1億146万円。基準日の貸借対照表を最初に求め、価格の式に基準日の純資産を入れて、実行日までに動いた分の調整を契約に書きます。
払える上限は、自社で同じものを作る費用と待ち時間で決まります。純資産を超えて払ったのは1億146万円。Tmallの個人顧客の基盤、越境ECの運営、48人のチームを自社で作る費用と待ち時間が1億円を超えるなら、買う方が安くなります。開示に立ち上げ費用の数字はなく、自社の数字で見積もる部分です。当社(CommerceX M&A)は、対象の事業だけの価値と、自社に入れた後の価値を分けて持ち、払うのは前者までを基本にします。コメ兵ホールディングスは、2025年5月の決算補足説明資料で、BRAND OFF・RECLO・MIKE MUSEUMの3つのドメイン(サイト)の在庫を連携し、自社ECと越境ECを伸ばす計画を示しました。自社の在庫を流せる買い手には、後者の価値があります。
売主が事業会社なら、親子のやりとりと共用の仕組みの切り分けから確かめます。RECLOは約3年3か月のあいだに、事業譲受・会社分割・株式譲渡と、持ち主か法人の形が3回変わりました。Tmallの出店者の地位、ドメイン、取引先との契約、古物営業の許可の名義が、現在の法人へ切れ目なく承継されているかを確かめます。売主との間に仕入れ、倉庫やシステムの共用、人員の出向があれば、株式を渡した後に誰が担うかも確かめます。当社は、業務・人・資産・契約・システムの5つに分けて、親会社に頼っている部分を洗い出します。
赤字の会社を株式で買うと、代金のほかに貸付けと費用の資金が要ります。連結キャッシュ・フロー計算書の注記には、代金3億5,959万円、RECLOの現金2億6,829万円、新規連結子会社への貸付金2億円が並び、差引の取得のための支出は2億9,130万円。取得関連費用2,648万円(代金の7.4%)は別です。貸付けの使い道は開示にありません。資金計画は、代金に貸付けと費用を足した額で組みます。
買った後の成果は、吸収合併のあと数字で追えなくなります。RECLOは取得の約3か月後にK-ブランドオフへ合併し、7月以降の事業はK-ブランドオフの数字に混ざります。2026年3月期の決算説明資料の本文に、RECLOの名前は出てきません(2026年10月16日確認)。当社は、買収の検討の最初に「買収先のここを、自社のこの力で、こう伸ばせる」を一文にします。この件なら「RECLOの中国の顧客基盤を、BRAND OFFの在庫で伸ばす」。RECLO経由のEC売上、越境ECの売上、在庫の回転日数は、合併の前に決めて取り始めます。
よくある質問
Q. RECLOは、本当に純資産割れで買われたのですか。
A. 発表の数字だけなら、0.40倍の純資産割れに見えます。分母が、取得の1年前の純資産9億600万円だからです。有価証券報告書では、連結に入れた時点の純資産は2億5,813万円で、のれんが1億146万円出ています。
Q. 赤字の会社は、何で値段を決めますか。
A. 利益の倍率は使えないため、取得日の純資産と、自社で同じものを作る費用と待ち時間で決めます。RECLOは受入純資産の1.39倍で、超えた1億146万円を、コメ兵は将来の超過収益力(のれん)として計上しました。
Q. のれん1億円を5年で償却すると、買い手の利益はどうなりますか。
A. 年2,029万円が毎年の営業利益を減らします。コメ兵ホールディングスの営業利益の0.3%で、営業利益1億円の会社なら約2割。償却は会計上の費用で、現金は出ていきません。
Q. こうした案件は、どこで見つかりますか。
A. 公表されるのは、買い手が上場企業で、開示した取引に限られます。CX BASEでは、買収のご相談をいただいた企業へ、条件に合う譲渡案件を公開前にご案内しています。
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赤字の会社の値段は、直近の純資産ではなく、取得日の純資産と、自社で同じものを作る費用で決まります。
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出典
- 株式会社コメ兵ホールディングス「当社連結子会社による株式取得(孫会社化)のお知らせ」(2024年4月3日公表・2026年10月16日確認)
- 株式会社コメ兵ホールディングス「有価証券報告書 第47期(2025年3月期)」(2025年6月24日提出・2026年10月16日確認)
- 株式会社コメ兵ホールディングス「2025年3月期 決算補足説明資料」(2025年5月14日公表・2026年10月16日確認)
- 株式会社コメ兵ホールディングス「2026年3月期 決算説明資料」(2026年5月14日公表)、「有価証券報告書 第48期(2026年3月期)」(2026年6月23日提出)(いずれも2026年10月16日確認)
- 株式会社ULTRA WIDE「事業譲受に関するお知らせ」(2020年12月21日公表・2026年10月16日確認)
- 株式会社RECLO「運営会社変更のお知らせ」(2021年8月22日付・2026年10月16日確認)
- 株式会社コメ兵ホールディングス 公式サイト TOPICS「株式会社RECLOがグループに加わりました」(2024年4月3日)、「RECLO」公式サイト(reclo.jp)トップページと「特定商取引法・古物営業法に基づく表示」(いずれも2026年10月16日確認)
(金額は株式の代金です。3億5,876万円は適時開示の取得価額、3億5,959万円は有価証券報告書の取得の対価で、差は82万8千円。アドバイザリー費用等2,648万円は別です。取得比率100%のため換算していません。のれん・受入資産・負債・現金・貸付金・取得のための支出は有価証券報告書の数字。受入純資産2億5,813万円は資産と負債の差額、倍率・割合・年償却額は当社試算です)