M&Aニュース2024年10月 実行書き手:齋藤 浩喜

アールケイエンタープライズに42億円 ── のれんは営業利益の3.3年分、引き継いだ現金は25億円

発表日2024年9月25日(取締役会決議・契約は同日。株式の取得は10月23日)
譲受企業株式会社コメ兵ホールディングス(東証スタンダード 2780)
譲渡企業株式会社アールケイエンタープライズ(1954年設立・横浜市)と、子会社のRODEO DRIVE JAPAN(香港)
事業ブランド品の販売・買取・質の店舗「ロデオドライブ」と、法人向けオークション「RKオークション」
譲渡価額42億円(1,104株・議決権100%。香港子会社の株式も同時に取得)
スキーム株式取得(現金)。合併せず、連結子会社として存続
出典コメ兵ホールディングス 適時開示(2024年9月25日)・有価証券報告書 第47期(2025年6月24日提出)

株式会社コメ兵ホールディングス 公式サイト (出典:コメ兵ホールディングス 公式サイトのTOPICS「株式会社アールケイエンタープライズがグループに加わりました」2024年10月23日・2026年10月16日時点の画面)

RK ENTERPRISE 公式サイト (出典:アールケイエンタープライズ 公式サイト(rk-enterprise.jp)・2026年10月16日時点の画面)

譲渡企業の概要

アールケイエンタープライズは、1954年に横浜で創業したブランドリユース・質の会社で、2024年3月期の売上高は202億4,200万円です。本社は横浜市中区、資本金5,000万円。「ロデオドライブ」を国内8店舗・香港1店舗(発表時)で展開し、自社に時計の修理工房を持ちます。従業員は150人(ほかに準社員・パート等が平均50人・2025年3月末)。

決算期(3月期)2022年3月期2023年3月期2024年3月期
売上高172億3,300万円182億7,600万円202億4,200万円
営業利益7億2,900万円7億500万円4億8,100万円
当期純利益3億6,700万円4億9,300万円3億4,400万円
純資産17億7,000万円22億6,400万円26億900万円

売上高は2期で17.5%増えた一方、営業利益は34.0%減り、営業利益率は4.2%から2.4%へ下がりました。配当は3期ともありません。香港子会社の売上高は、2024年6月期までの2期で41%減っています。

譲受企業の概要

コメ兵ホールディングスは、中古のブランド品・時計・宝石の買取と販売で、2025年3月期の連結売上高が1,589億9,400万円の会社です。営業利益は61億7,600万円で、前期より17.1%減りました。2024年5月の中期経営計画では、2028年3月期に売上高2,500億円・営業利益150億円を掲げ、成長戦略にM&Aを入れています。

M&Aの目的・背景

狙いは、神奈川の買取・小売の強化、法人向けオークションの拡大、時計の相場対応の高度化です。開示は、買取・販売の競争が激しいなか、ブランドリユースの首位を保ち総流通量を広げる方針の一環と位置づけています。評価したのは、歴史と実績、法人向けオークション、時計の修理工房、人材です。

相場対応は、グループの当時の課題と重なります。有価証券報告書によると、2024年8月から一部商品の相場が動き、在庫の流動化に法人販売を使った結果、連結の売上総利益率は2.6ポイント下がって22.2%でした。決算説明会の質疑(要約)は、自社オークションが大きくなれば他社への出品を切り替え、支払手数料を抑えられると説明しています。

M&Aの手法・成約内容

代金は現金42億円で、決議と契約は2024年9月25日、株式の取得は28日後の10月23日です。コメ兵ホールディングス自身が、1,104株(100%)を4,200,000,192円で取得しました。売主は代表取締役の原幸雄氏ほか計7名の株主で、上場会社との資本・人的・取引の関係は「該当事項はありません」。評価の方法と算定機関の記載は、適時開示にありません。アドバイザリー費用等は、概算5,000万円に対し、有価証券報告書の実額が7,170万円(代金の1.7%)です。

発表と同日、新社長の予定も示されました。法人オークション会社KOMEHYOオークションの社長を兼ねる、常務取締役の沢田登志雄氏です。10月23日付の公式発表は、同氏を代表者と記しています。

この値段は、どう説明できるか

42億円は、発表時の純資産26億900万円の1.61倍で、のれんは15億7,491万円、営業利益の3.3年分です。左は発表時の開示(2024年3月期末)、右は有価証券報告書の企業結合注記の数字です。100%の取得のため、評価額は取得価額と同じです。

項目発表時の開示で計算連結に入れた時点(有報)
会社全体の評価額(100%)42億円42億円
うち純資産26億900万円26億2,509万円
差額(のれん)15億9,100万円15億7,491万円
純資産の何倍1.61倍1.60倍
営業利益4億8,100万円の何年分3.3年分3.3年分

連結に入れた時点の純資産は、連結開始時(みなし取得日の2024年12月31日)の資産83億2,230万円から負債56億9,721万円を引いた額で、2024年3月期末から9か月で約1,600万円(0.6%)しか増えていません。この間の利益や配当は開示にありません。年買法(純資産に営業利益1〜3年分を足す考え方)の上限は40億5,200万円で、42億円はこれを1億4,800万円(3.7%)上回ります。

実際に計上されたのれんと、その償却

のれんは15億7,491万円で、10年の均等償却。年1億5,749万円が費用になります。発生原因は有価証券報告書に「将来の超過収益力」とあり、10年とした理由の記載はありません。年償却額は、2024年3月期の営業利益の33%、当期純利益の46%、コメ兵ホールディングスの2025年3月期の営業利益の2.6%にあたります。2026年3月期の連結ののれん償却額2億5,692万円のうち、約6割がアールケイ分です(いずれも当社試算)。

同時に出た負ののれん

香港子会社では、3億3,877万円の負ののれん発生益が特別利益に入りました。有価証券報告書は、取得価額が被取得企業の時価純資産を下回ったためと説明しています。香港子会社分の取得価額は開示にありません。受入純資産3億6,965万円から負ののれんを引いて逆算すると、約3,088万円です(当社試算)。のれんと負ののれんを合わせた正味の上乗せは12億3,614万円で、連結の受入純資産29億6,386万円の1.42倍です。

連結に入った現金と、実際の支出

連結に入った現金及び現金同等物は25億4,740万円で、取得のための支出(純額)は16億5,260万円です。代金42億円の61%にあたる現金を、会社が持っていました。連結の流動資産77億4,789万円のうち現金は33%で、残る約52億円の内訳は開示にありません。負債は59億2,595万円で、借入と仕入債務の内訳もありません。RECLOとRs-JAPANの注記には新規連結子会社への貸付金(2億円・17億円)が出ますが、アールケイエンタープライズの欄にはありません。

同じ年度のRECLOとの比較

同じ有価証券報告書で並べると、RECLOは発表時の0.40倍が1.39倍へ動き、アールケイエンタープライズは1.61倍が1.60倍のままでした。どちらも2025年3月期の連結に入っています。

項目RECLOアールケイエンタープライズ
純資産:発表時の最新期末→連結に入れた時点9億600万円→2億5,813万円26億900万円→26億2,509万円
期間・動き15か月・71.5%減9か月・0.6%増
純資産の何倍(発表時→有報)0.40倍→1.39倍1.61倍→1.60倍
直近の営業利益△3億200万円4億8,100万円
のれん・償却年数・年償却額1億146万円・5年・2,029万円15億7,491万円・10年・1億5,749万円
取得のための支出(純額)2億9,130万円(貸付金2億円を含む)16億5,260万円
買収後約3か月で吸収合併別会社のまま存続

差は、会社の違いと、決算期末から取得日までの期間(15か月と9か月)の両方から出ています。RECLOは赤字で、アールケイエンタープライズは黒字でした。

買い手が読み取れること

取得日の純資産が決算期末から動くかどうかは、会社ごとに違います。RECLOは71.5%減、アールケイエンタープライズは0.6%増でした。同じ年度に取得したRs-JAPANは、譲渡前に同社が現金配当を実施し、取得価額が6億9,000万円から1億9,000万円へ下がっています。当社(CommerceX M&A)は、株式の取得では現金・有利子負債・運転資本を価格の式に入れ、実行日までの配当と借入の返済を契約で決めます。

営業利益が出ている会社は、のれんの年数と年償却額で、払える上限を確かめられます。3.3年分は年買法の上限を上回り、年償却額は直近の営業利益の33%。営業利益が3期で34%下がっており、直近期が底かどうかは開示から読めません。下落が続くかが、10年償却の回収を左右します。売上総利益率の推移と、店舗別・チャネル別の損益を求めます。

引き継ぐ現金は代金の61%にあたり、負債も59億円あります。負債が借入か仕入債務か、現金が仕入に使う分か余りかで、実質の払い出しは変わります。売主に確かめる点です。

時計とブランド品の在庫は、相場が動いたときの評価損を先に試算します。在庫の金額は開示になく、自社で求める部分です。当社は、相場が10〜20%下がったときの評価損を、営業利益と並べて先に出します。

売主が個人の株主なら、実行日に誰が経営するかを先に決めます。本件は、発表と同日に新社長を示しました。当社は、売主の代表の引継ぎ期間と競業避止を、契約の前に決めます。

買収後の成果は、買う前に測り方を決めます。アールケイエンタープライズは合併されず、有価証券報告書に社別の損益は出ません。グループは4つの法人オークションの出来高を2026年3月期の合計1,069億円と開示しますが、RKオークション単独の数字は、確認した決算資料にありません。

よくある質問

Q. アールケイエンタープライズは、純資産の何倍で、営業利益の何年分で買われましたか。

A. 発表時の純資産26億900万円の1.61倍です。有価証券報告書では受入純資産26億2,509万円の1.60倍で、のれんは15億7,491万円、営業利益4億8,100万円の3.3年分にあたります。

Q. 42億円のうち、実際に出ていく資金はいくらですか。

A. 連結に入った現金及び現金同等物25億4,740万円を引いた、16億5,260万円です(有価証券報告書の連結キャッシュ・フロー計算書の注記)。アドバイザリー費用等は別です。

Q. 負ののれんとは何ですか。現金は入りますか。

A. 取得価額が、受け入れた純資産の時価を下回ったときに出る差額です。本件では香港子会社で3億3,877万円が特別利益になりました。会計上の利益で、現金は入りません。

Q. こうした会社の譲渡は、どこで見つかりますか。

A. 公表されるのは、買い手が上場企業で、開示した取引に限られます。CX BASEでは、買収のご相談をいただいた企業へ、条件に合う譲渡案件を公開前にご案内しています。

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出典

  • 株式会社コメ兵ホールディングス「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」「役員の異動に関するお知らせ」(いずれも2024年9月25日)、同訂正(2024年9月26日)、「臨時報告書」(2024年9月26日提出)
  • 同「有価証券報告書 第47期(2025年3月期)」(2025年6月24日提出)、「第48期(2026年3月期)」(2026年6月23日提出)
  • 同「2025年3月期 決算補足説明資料」(2025年5月14日)、「通期決算説明会 質疑応答(要約・補足)」(2025年5月15日開催)、「2026年3月期 決算説明資料」(2026年5月14日)
  • 同「(開示事項の経過)当社連結子会社による株式取得(孫会社化)のお知らせ」(2024年11月1日)
  • 同 公式サイト TOPICS(2024年10月23日)、株式会社アールケイエンタープライズ 公式サイト(rk-enterprise.jp)
  • 上記は2026年10月16日確認。RECLOの数字は、本サイトの「RECLOに3.6億円」と同じ有価証券報告書 第47期から

(金額は株式の代金です。42億円は適時開示の取得価額4,200,000,192円と有価証券報告書の取得の対価4,200,000千円(差は千円未満)。のれん・負ののれん・受入資産と負債・現金・支出は有価証券報告書の数字で、受入純資産・倍率・割合・年償却額・正味の上乗せ・年買法は当社試算です。適時開示は連結・単体の別を書かず、有価証券報告書の受入純資産と近いため、同じ基準として並べました)

書き手
齋藤 浩喜さいとう ひろき
CommerceX M&A株式会社 代表取締役

2014年より輸入・EC事業で起業。8年間で海外ブランドの日本展開に注力し、累計30以上のブランドの立ち上げ日本展開を行う。

2022年に自ら立ち上げたゴルフブランドPuttOUT事業をCommerceXグループへ事業譲渡。その経験を機に、国内最大手M&A仲介会社に入社。コマース領域のM&A実務に従事した。2026年5月、CommerceX M&A株式会社を設立し代表取締役に就任。同時にCommerceXホールディングス執行役員として、EC・小売領域のM&AとAI活用を推進している。

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