M&Aニュース2024年3月 実行書き手:齋藤 浩喜

ジョシュアツリーに2億円 ── 外注先を買ったピアラは、のれん1.5億円を6年で償却し、2年目に減損の兆候を認めた

発表日2024年3月4日(株式譲渡の実行 2024年3月8日)
譲受企業株式会社ピアラ(東証スタンダード 7044)
譲渡企業株式会社ジョシュアツリー(2018年11月設立・東京都目黒区)
事業マーケティングコンサルティング、広告代理(運用代行を含む)
譲渡価額2億円(60株・議決権100.0%)
スキーム株式譲渡
出典ピアラ 適時開示(2024年3月4日)

株式会社ジョシュアツリー 公式サイト (出典:株式会社ジョシュアツリー 公式サイト・2026年10月16日時点の画面)

譲渡企業の概要

ジョシュアツリーは、売上3億円・営業利益5,700万円の、広告運用とマーケティング支援の会社。2018年11月設立で、本社は東京都目黒区、資本金は6万円。代表取締役が株式の100.0%を保有していました。公式サイトは、少数精鋭の専門家が様々な業種・規模の顧客を支援する会社と説明しています。ピアラとは2020年から取引があり、開示は取引関係を、ピアラの案件を業務委託で受けている関係と書いています。

決算期2021年9月期2022年9月期2023年9月期
売上高7,622万円7,386万円2億9,813万円
営業利益△286万円△2,071万円5,726万円
純資産810万円△1,015万円3,703万円

売上高は2023年9月期に前期の4.0倍へ増え、営業利益は2期連続の赤字から黒字に転じました。この表は、開示の注記によると監査法人の監査を受けていません。

譲受企業の概要

ピアラは、化粧品・食品の通販会社を主な顧客に、新規顧客の獲得から既存顧客の育成までを一括で支援する、東証スタンダードの会社。2004年設立。2023年12月期の売上高は90億6,484万円(前期比23.0%減)、営業損失は3億8,373万円で、営業損失は3期連続でした。純資産は5億8,268万円。2023年7月にはSNS運用を手がけるone moveの株式51%を7,650万円で取得しており、ジョシュアツリーはそれに続く子会社化です。

M&Aの目的・背景

狙いは、買い手の弱点だった納品効率を、2020年から外注していた会社を子会社にして直すこと。開示によると、2023年12月期の売上と利益は厳しい状況になり、悪化の要因の1つが納品効率の低下でした。ピアラは体制変更、人員投資、AI活用で改善を進めていて、その一環として、外部委託先で自社をよく知るジョシュアツリーを子会社にします。顧客への納品効率が高いため、人員を増やして納品効率を改善し、業績回復と企業価値の向上につなげる、という説明です。

開示は、ピアラとジョシュアツリー、売主個人の間に資本関係も人的関係もないと書いています。目的に挙がっているのは人員と納品効率で、新しい市場への参入は挙がっていません。

M&Aの手法・成約内容

60株を2億円で取得し、議決権の100.0%を持ちました。デュー・ディリジェンス費用等の概算は238万円で、合計は2億238万円です。取得価額は、外部専門家にデュー・ディリジェンスを依頼し、DCF法による株式価値の評価結果をふまえて決めたと開示にあります。対価は現金。取締役会決議と契約は2024年3月4日、株式譲渡の実行は3月8日です。

支払いの形は、有価証券報告書の連結キャッシュ・フロー注記で分かります。取得価額2億円のうち1億円は、2024年12月期末の時点で未払金として残っていました。取得のための支出(純額)は7,040万円で、ジョシュアツリーが持っていた現金2,960万円も差し引いた額です。後払いの条件や時期は、開示に記載がありません。

この値段は、どう説明できるか

営業利益の2.8年分ののれん。年買法の上限2億881万円の内側に収まる値段。100%の取得なので、会社全体の評価額は2億円。下の表は、開示の最新期(2023年9月期)の数字で計算した列と、連結に実際に計上された額の列です。

項目開示の最新期で計算連結に計上された額
会社全体の評価額(100%)2億円2億円
うち純資産3,703万円5,444万円
差額(のれん)1億6,297万円1億4,556万円
営業利益5,726万円の何年分2.8年2.5年
純資産の何倍5.40倍3.67倍

年買法(時価純資産+営業利益1〜3年分)は9,429万円から2億881万円で、2億円はその上限の内側です。ただ、営業利益5,726万円は直近1期だけの数字で、前の2期は赤字でした。3期の営業利益の合計は3,370万円で、2億円はその5.9倍です。

実際に計上されたのれんと、その償却

連結ののれんは1億4,556万円で、6年の均等償却。年2,426万円が費用になる。取得原価2億円から、受け入れた資産1億4,333万円と負債8,889万円の差(純資産に当たる5,444万円)を除いた額です。みなし取得日は2023年12月31日で、決算期末(2023年9月30日)の純資産3,703万円との間に1,741万円の差があります。差の理由は開示にありません。

2024年12月期末2025年12月期末
ジョシュアツリーに係るのれんの残高1億2,737万円1億311万円

残高の減少は2,426万円で、年償却の額と一致します。年2,426万円は、開示の最新期の営業利益5,726万円の42%にあたります。

ピアラの側で見ると、2億円は2023年12月期末の純資産5億8,268万円の34.3%、現預金19億5,268万円の10.2%です。2025年12月期の連結営業利益は4,054万円で、日本基準どおり、のれん償却を販売費及び一般管理費に入れているなら、償却の合計3,341万円を差し引いたあとの額です。償却のうちジョシュアツリー分が約7割を占めます。

取得後のジョシュアツリー

取得1年目は計画どおり、2年目は計画に届かず、減損の兆候を認めたうえで減損は見送られた。ピアラの有価証券報告書と決算補足資料から、2期分を並べます。

2024年12月期(取得年度)2025年12月期(2年目)
有価証券報告書の判断概ね計画どおりの売上・営業利益で、翌期以降も安定的な推移を見込み、減損の兆候なし減損の兆候を識別。利益の低下は一過性で、超過収益力は毀損していないとして減損は不要と判断
決算補足資料の評価順調に売上及び利益を計上当初計画には及ばなかったものの、通期黒字で着地
のれんの減損損失計上なし計上なし

のれん残高の減り方は2期とも償却額と一致し、損益計算書の減損損失はソフトウエア等の資産の分です。ジョシュアツリー単体の売上や利益は、取得後の開示に出ていません。2024年12月期の監査では、取得時の事業計画との比較に加え、決算日後3か月の売上高・営業利益が下方に乖離していないことが確かめられています。

有価証券報告書の関係内容は、ピアラが管理部門の業務を受託していると記し、役員の兼任の記載はありません。売主の残留期間、競業避止、役員への就任といった条件は、開示にありません。公式サイトの会社概要にある代表者名は、取得前の開示にあった代表取締役と同じです。2026年10月16日までに確認した適時開示と、2026年8月14日提出の半期報告書に、ジョシュアツリーの減損や合併の開示は見当たりません。

2024年12月期の決算補足資料は、納品力が2021年と同程度まで戻り、ジョシュアツリーの参画でナレッジと人員が増えたと説明しています。

買い手が読み取れること

外注先を買う値段は、利益の年数ではなく、自社で同じ納品力をそろえる費用で上限を決める。ピアラの開示に、自社で同じ人員を採用して育てた場合の費用や、外注費の削減額は書かれていません。外注費の年額、委託先の人員を自社で採る費用、育つまでの期間を、価格を出す前に自社の数字で試算します。当社(CommerceX M&A)は、買収先のここを、自社のこの力で、こう伸ばせると一文で言い切れるかを最初に確かめます。この件なら、委託先の納品力を、自社の受注の上で、外注費の内製化として使う、の一文になります。

売上のうち自社向けの割合は、取引先の集中として、買い手が必ず確かめる。開示は取引関係を業務委託とのみ記載し、ジョシュアツリーの売上のうちピアラ向けの割合は書いていません。買い手向けの売上は、連結では内部取引として消えます。残る外部の売上が買収後も続くかどうかで、買った会社の価値が決まる。2023年9月期に売上が4.0倍になっているため、増えた分がどの取引先かを、取引先別の売上で確かめます。

売主と主要な担当者が残る条件は、開示に無い。契約前に期間と報酬を決める。少数精鋭をうたう会社は、人に事業が寄っています。当社が公表された小型の買収を買収後の数字まで見た範囲では、創業者や顔が残った買収は伸びています。取得価額の半分が2024年12月期末まで未払金で残っていた点は、支払いを売主の残留期間や業績の確認と結びつけられるかを、契約で決める材料になります。ピアラが結びつけていたかどうかは、開示から分かりません。残る形の違いは売却したあと、社長はどのくらい関わるのかにまとめています。

買った後は、計画と実績のずれが減損の判定につながる。ジョシュアツリーの2年目は計画に届かず、ピアラは利益の低下を一過性と判断して減損しなかったものの、兆候の判定は避けられませんでした。判断の根拠は買収時の事業計画との比較で、計画を残して四半期ごとに実績と照らします。

よくある質問

Q. 営業利益5,726万円の会社に2億円は、高いのですか。

A. 直近期の営業利益で割ると、のれんは2.8年分で、年買法の範囲(9,429万円から2億881万円)に収まります。ただし前の2期は赤字で、3期の営業利益の合計は3,370万円。価格はその5.9倍です。高いかどうかは、買い手が自社で同じ納品力をそろえる費用と比べて決まります。

Q. のれん約1億4,556万円を6年で償却すると、買い手の利益はどうなりますか。

A. 年2,426万円が営業利益を減らします。ピアラの2025年12月期の連結営業利益4,054万円は、のれん償却3,341万円を差し引いたあとの額で、うちジョシュアツリー分が約7割です。償却は会計上の費用で、現金は出ていきません。

Q. 外注先を子会社にするとき、何を確かめますか。

A. 売上のうち自社向けの割合、売主と主要な担当者が残る期間、後払いの条件の3つです。自社向けの売上は連結で消えるため、外部の売上が続くかどうかが価値を決めます。人に宿る価値は、契約で残る形にします。

Q. 2億円前後の譲渡案件は、どこで見つかりますか。

A. 公表されるのは、買い手が上場企業で、開示した取引に限られます。開示の対象にならない譲渡は、公表されないまま成立します。CX BASEでは、買収のご相談をいただいた企業へ、条件に合う譲渡案件を公開前にご案内しています。

ご相談ください

外注先を買う取引は、価格より、自社向けの売上の割合と、売主が残る条件が価値を決めます。

CX BASEは、EC・小売・D2C領域の譲渡案件を扱っています。買収のご相談をいただいた企業には、条件に合う案件を公開前にご案内します。

売却をお考えの方は、取引先別の売上と、売主が残る期間をもとに、買い手が見る数字をご説明します。

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出典

  • 株式会社ピアラ「株式会社ジョシュアツリーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2024年3月4日公表・2026年10月16日確認)
  • 株式会社ピアラ「有価証券報告書 第20期(2023年12月期)」(2024年3月27日提出)、「同 第21期(2024年12月期)」(2025年3月27日提出)、「同 第22期(2025年12月期)」(2026年3月27日提出)、「半期報告書 第23期中」(2026年8月14日提出)(2026年10月16日確認)
  • 株式会社ピアラ「2024年12月期 通期決算補足資料」(2025年2月13日公表・同年2月21日に一部訂正)、「2025年12月期 通期決算補足資料」「2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(いずれも2026年2月13日公表)(2026年10月16日確認)
  • 株式会社ジョシュアツリー 公式サイト(2026年10月16日確認)

(金額は株式の代金2億円です。デュー・ディリジェンス費用等の概算238万円を含む総額は2億238万円。取得比率100.0%のため換算していません。財務数値は決算書ベース(利益修正前)で、ジョシュアツリーの3期は監査を受けていません。「開示の最新期で計算」の列は、2023年9月期の純資産3,703万円と営業利益5,726万円による当社試算。「連結に計上された額」の列のうち、のれん1億4,556万円と受け入れた資産・負債は有価証券報告書の数字で、純資産5,444万円は受け入れた資産と負債の差です。年償却2,426万円は、のれん1億4,556万円を6年で割った当社計算で、有価証券報告書のジョシュアツリー分ののれん残高の減少と一致します)

書き手
齋藤 浩喜さいとう ひろき
CommerceX M&A株式会社 代表取締役

2014年より輸入・EC事業で起業。8年間で海外ブランドの日本展開に注力し、累計30以上のブランドの立ち上げ日本展開を行う。

2022年に自ら立ち上げたゴルフブランドPuttOUT事業をCommerceXグループへ事業譲渡。その経験を機に、国内最大手M&A仲介会社に入社。コマース領域のM&A実務に従事した。2026年5月、CommerceX M&A株式会社を設立し代表取締役に就任。同時にCommerceXホールディングス執行役員として、EC・小売領域のM&AとAI活用を推進している。

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