ONZOの買収額は非公表 ── SSマーケットがサブスクSaaSを買った4か月後、社名は「marvle」に、本店は買い手の本社と同じ住所に移った
| 発表日 | 2024年8月1日(株式取得の実施日は2024年7月24日) |
| 譲受企業 | 株式会社SSマーケット(2012年3月設立・東京都八王子市・未上場) |
| 譲渡企業 | 株式会社ONZO(2018年7月設立・埼玉県さいたま市。2024年11月にmarvle株式会社へ商号変更) |
| 事業 | ECサイトにレンタル・サブスクを組み込むSaaS「marvle」の開発・提供 |
| 譲渡価額 | 非公表(「完全子会社化」とのみ記載。取得株式数の記載なし) |
| スキーム | 株式取得(完全子会社化) |
| 出典 | SSマーケット ニュースリリース(2024年8月1日)・国税庁 法人番号公表サイト(変更履歴) |
(出典:株式会社SSマーケット 公式サイト・2026年10月16日時点の画面。2024年8月1日のニュースリリース)
譲渡企業の概要
ONZOは、ECサイトに「お試しレンタル」「サブスク」のボタンを設置できる仕組みを提供していた、従業員9名のSaaS会社。2018年7月設立で、本店はさいたま市浦和区にありました。発表文は事業を「サブスク型の決済とマーケティングを最適化するSaaSアプリケーションの開発・販売」と説明しています。主力は「marvle」(マーブル)。ECサイトでのレンタルとサブスクを支える仕組みです。
ONZOの2022年12月の発表によると、EC事業者は最短5分ほどの作業で商品ページにボタンを設置できます。レンタル品の出荷とメンテナンスは、ONZOの倉庫への委託が可能。SSマーケットの発表文は、システムの提供に加え、新規事業の体制づくりと収支計画の支援、倉庫での管理・配送、顧客窓口の代行までONZOが担うため、導入した会社の運営に人手がかからないと説明します。
ONZOは2024年5月の発表で、高額オーディオ機器や精密機械のレンタルを手がけてきた会社として、倉庫とメンテナンスのノウハウを挙げています。資本金は5,009万円(50,094,368円)。
売上・利益・純資産は、確認できた資料に出ていません。
譲受企業の概要
SSマーケットは、法人向けにパソコンを貸し、戻ってきた機器を自社で整えて貸し直す未上場の会社。2012年3月設立で、本社は東京都八王子市。事業はPCレンタルサイト「レンタルマーケット」、IT機器の導入から撤去までを請け負うLCMサービス、ドローンのレンタルです。資本金は5,000万円(公式サイトの会社概要)。上場の有無は、PR TIMESの企業情報欄が「未上場」。親会社の記載は、発表文にも公式サイトの会社概要にも、金融機関の評価書にもありません。
山梨中央銀行が2024年9月13日に公表した評価書によると、レンタルの提供先は2,760先、2023年のレンタル台数は11万2,600台。戻ってきた機器は、自社でメンテナンスとクリーニング、再生(リファービッシュ)を行い、貸し出し直します。キッティング(初期設定)と物流の機能は、神奈川県相模原市の橋本ロジスティクスセンターに集約。評価書はこの回収から再生までの物流を「リバースロジスティクス」(利用者の側から生産者の側へ戻る物流)と呼び、同社の強みの一つに挙げています。
M&Aの目的・背景
SSマーケットの理由は、レンタルで培った物流の経験を、PCとタブレット以外の商品に広げること。発表文は、ONZOの取得を「事業内容を進化させ、サービスの多様化と品質向上を図るための重要な一歩」と位置づけ、レンタル事業で得た物流の経験を生かして、家具や家電なども扱う予定だと書いています。SSマーケットの代表は、自社のサポート体制とリバースロジスティクスを使い、誰もが気軽に「体験」できるさまざまな商品をレンタルできるサービスを作ると述べています。
ONZO側の代表が挙げた理由は、サポートと営業の体制を厚くすること。譲渡によって、より充実した体制で顧客のニーズに合ったサービスを提供できる。marvleにはまだ十分な成長余力がある。代表のコメントはこの2点です。ONZOのサービスは、新規・既存を問わずこれまでどおり使えると、発表文は書いています。
M&Aの手法・成約内容
SSマーケットがONZOの株式を取得し、完全子会社にしました。実施日は2024年7月24日、発表は2024年8月1日。発表文は実施日を「事業譲渡実施日」と書いていますが、見出しと本文は株式の取得です。取得株式数、取得価額、算定方法、アドバイザーの記載はありません。
国税庁の法人番号公表サイトでは、ONZOは2018年に指定された同じ法人番号のまま、商号と本店だけが変わっています。法人そのものが残った記録で、事業だけを移す事業譲渡ではなく、株式の取得だった発表と合います。
買収後の経過
取得の4か月後に社名が「marvle」になり、2日後に本店が買い手の本社と同じ住所へ移りました。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年7月24日 | 株式取得の実施日(SSマーケットの発表文) |
| 2024年8月1日 | 取得を発表。ONZOのサービスは新規・既存を問わず変わらず使えると案内 |
| 2024年9月13日 | 山梨中央銀行がSSマーケットへの融資の評価書を公表。事業概況にONZOの取得を記載し、ONZOの役割をサブスクメニューの運用と料金決済などの管理と説明 |
| 2024年11月25日 | ONZOがmarvle株式会社に商号を変更(国税庁 法人番号公表サイト) |
| 2024年11月27日 | 本店をさいたま市浦和区から東京都八王子市子安町4丁目7-1 サザンスカイタワー八王子6階へ移転。SSマーケットの発表文にある東京本社と同じ住所 |
新しい社名は、ONZOが提供するSaaSのサービス名と同じ。評価書によると、SSマーケットの計画は、リバースロジスティクスを生かして、物のサブスクを始めたいメーカー・小売事業者にサブスク型ビジネスの展開を支援することです。
取得後のmarvleの導入社数、売上、利益は、確認できた公開資料に出ていません。SSマーケットが公式サイトの「ニュースリリース」欄に掲載した、取得の発表から2026年9月14日までの14件は、PCレンタルの新サービスと調査、融資、支店の開設などが中心。見出しにONZOもmarvleも含むものはありません。計画どおりに進んだかどうかは、公開情報から判定できません。
この値段は、どう説明できるか
ONZOの値段は、確認できたどの資料にも出ていません。次の資料を見ました。
| 見た資料 | 結果 |
|---|---|
| SSマーケットのニュースリリース(2024年8月1日)とPR TIMES配信版 | 取得価額・取得株式数・比率・算定方法の記載なし |
| 山梨中央銀行の評価書(2024年9月13日) | ONZOの取得と役割の記載はあるが、金額なし |
| 国税庁 法人番号公表サイト | 商号と本店の変更履歴のみ |
| 上場企業の適時開示・有価証券報告書 | 両社とも未上場で、該当なし |
SSマーケットにもONZOにも、親会社や出資者として上場企業を示す記載は、確認した資料にありません。
「5,000万円」という数字を見かけることがありますが、確認できた一次資料に、取得代金としては出てきません。近い額は、発表文にあるONZOの資本金50,094,368円(約5,009万円)です。
当社(CommerceX M&A)の見解では、払う上限は対象の単体の事業の価値までです。SaaSの単体の価値は、導入企業の数、解約の少なさ、売上の内訳で測ります。marvleについて、この3つはいずれも公開資料にありません。SSマーケットの物流を足して初めて出る価値は、買った後の取り分として別に数えます。
買い手が読み取れること
買収の理由は、買い手が自社の物流を何に使うかで書かれています。SSマーケットの発表文が挙げるのは、ONZOの技術そのものより、レンタルで培った物流の経験を、PCとタブレット以外の商品に広げることです。当社は、買収を検討する最初に「買収先のここを、自社のこの力で、こう伸ばせる」を一文にして、金額を考える前に確かめます。発表文の記載で当てはめると、「ONZOの、ECサイトにレンタル・サブスクを組み込む仕組みを、SSマーケットの回収と再生の物流で、PCやタブレット以外の商品に広げる」です(当社の当てはめ)。この一文が作れない取引は、価格の議論に進みません。
売る側が挙げた理由は、サポートと営業の体制を厚くすることでした。発表文が書く業務の範囲は、倉庫の管理・配送と顧客窓口の代行です。導入先が増えるほどONZO側の作業も増える形で、取得時の従業員は9名でした。買い手が入れる人員と責任者は、契約前に決めておきます。当社の見解では、売主の経営者が残る場合も、自社側の事業責任者は初日から置きます。
値段が出ない取引でも、統合の動きは登記上の変更で日付つきに追えます。未上場同士の取引には、上場企業の開示にある取得価額も企業結合の注記もありません。商号と本店の変更は、国税庁の法人番号公表サイトで誰でも確認できます。この取得では、実施日から4か月後に社名がサービス名のmarvleに変わり、本店が買い手の本社と同じ住所に移りました。自社が同じ判断をするなら、社名を残すか買い手の名前に変えるか、本店をいつ移すかを、顧客への案内の日程とあわせて取得前に決めます。ONZOの場合、サービスは変わらず使えると発表文が先に案内していました。
取得後の成果は、外からは測れません。公開されているのは、取得の理由と、登記の変更日までです。導入社数、解約、売上、利益は出ていません。買い手が上場していない取引では、取得後の数字は買い手自身が持つ指標でしか追えません。たとえば導入社数、解約、受託した物流の件数の3つを、いつまでにどの水準へ持っていくかを、取得前に決めておきます。
よくある質問
Q. SSマーケットは、いくらでONZOを買ったのですか。
A. 非公表です。発表文に取得価額・取得株式数・比率の記載はなく、両社とも未上場のため、適時開示や有価証券報告書の企業結合の注記もありません。確認できた資料のどこにも、金額は出ていません。
Q. 「5,000万円」という数字を見かけますが、買収額ですか。
A. 確認できた一次資料に、取得代金としては出てきません。近い額は、発表文にあるONZOの資本金50,094,368円(約5,009万円)です。取得価額は発表されていません。
Q. 値段が出ない未上場同士の取引は、どう調べればよいですか。
A. 当事者の発表文、金融機関が公表する評価書、国税庁の法人番号公表サイトの順に見ます。前の2つで取得の理由と時期が、最後で商号と本店の変更日が分かります。金額は、契約の当事者に確かめるしかありません。
Q. SSマーケットは、なぜサブスクのSaaSを買ったのですか。
A. 発表文の理由は、レンタルで培った物流の経験を生かし、PCやタブレットに加えて家具や家電なども扱うためです。ONZOの仕組みと、SSマーケットの回収・再生の物流を組み合わせる狙いと読めます。
ご相談ください
未上場同士の取引は、値段が出ません。出るのは、取得の理由と、登記に残る変更の日付です。
CX BASEは、EC・小売・D2C領域の譲渡案件を扱っています。買収のご相談をいただいた企業には、条件に合う案件を公開前にご案内します。
売却をお考えの方は、買い手が自社のどの力で伸ばせるかを一文で言える形に、事業の強みと引き継ぎの論点を整理します。
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出典
- 株式会社SSマーケット「株式会社ONZOの株式取得(完全子会社化)のお知らせ」(2024年8月1日公表・2026年10月16日確認)。PR TIMES配信版も同日確認
- 株式会社SSマーケット 公式サイト「PROFILE」「ニュースリリース」一覧(2026年10月16日確認)
- 株式会社ONZO「レンタル・サブスク起点のサーキュラーエコノミーSaaS「marvle」が老舗オーディオECフジヤエービックに導入開始!」(2022年12月2日 PR TIMES配信・2026年10月16日確認)
- 株式会社ONZO「最大98%削減!3日が約1時間に。サブスク・レンタルの簡単導入「marvle」で、eKYC本人確認機能提供スタート」(2024年5月15日 PR TIMES配信。ASCII.jpの転載で2026年10月16日確認)
- 株式会社山梨中央銀行「株式会社SSマーケットに対して「山梨中銀ポジティブ・インパクト・ファイナンス」を実行しました」および同評価書(2024年9月13日公表・2026年10月16日確認)
- 国税庁 法人番号公表サイト「marvle株式会社」の変更履歴(2024年12月11日更新分・2026年10月16日確認)
(取得価額は非公表です。「4か月後」は、実施日2024年7月24日から商号変更日2024年11月25日までの当社計算。SSマーケットの発表文は実施日を「事業譲渡実施日」と書いていますが、見出しと本文は株式取得です。山梨中央銀行の評価書は取得時期を「2023年7月」と書いていますが、本稿はSSマーケット自身の発表文の2024年7月24日に従いました)