EC・D2Cの会社を売るなら、どこに相談すればいいか ── 初めてならM&Aの専門家。売却先を探す5つの方法

「会社を売りたいけれど、どこに相談すればいいのか分からない」。この動画は、そう考えている経営者に向けて話しました。

私は自分で事業を売った経験があり、国内最大手のM&A仲介会社で売却を支援する側にもいました。今は買収する側の仕事もしている。3つの立場を経験して、売りたい人が理想に近いM&Aをするための道筋が見えてきました。

この記事の結論は次の4つです。

  • 売却が初めてのときは、まずM&Aの専門家に相談する。買い手によって、提示額に1億円ほどの差が出ることがあります
  • 高く良い条件で売る公式は「提案する買い手の数×持っていく内容(資料・見せ方)×自分が希望する条件」。希望が相場から離れすぎると決まりません
  • 専門家は、信頼できる知り合い、紹介、複数の担当者との比較の順で探す。業種の知見と件数の実績がそろう人は少なく、実績を優先します
  • 相談は「いつか売るかもしれない」段階からでよい。最初は商品、会社のホームページ、決算書で見立てが分かります

会社を売るときの相談先は5つ(動画 0:45〜)

売却先を探す方法は、M&Aの専門家、税理士・銀行、マッチングサイト、自分で探す、取引先の5つです。細かく分ければほかにもありますが、大きくはこの5つです。

相談先どういう方法か
M&Aの専門家(仲介会社や、FA=ファイナンシャルアドバイザー)売却が一度も無いなら、まず相談する先。手数料はかかるが、その分高く売れることがある
税理士・銀行経由して相手を探してもらう。仲介会社とは手数料が違うことがある
マッチングサイト売却の情報をWebに載せ、相手を募る
自分で探す電話営業などで自分で当たる。例はほとんどない。魅力は最も伝えられるが、何十社と面談するのは負担が大きい
取引先仕入れ先や販売先に買ってもらう

初めての売却は、まずM&Aの専門家に相談する(動画 1:38〜)

売却が初めてのときは、まずM&Aの専門家に相談するのがよいと考えています。手数料を払っても、最終的に高く売れることがあるためです。

「売却を1度もしたことないんだったら、絶対専門家に相談した方がいいです」(1:39)

大手の仲介会社では、手数料が数千万円、たとえば2,000万円ほどかかることもあります。ただ、金額によっては、その分高く売れる。価値が2億円と算出された会社でも、2.5億円を出す買い手もいれば、1億5,000万円しか出せない買い手もいる。買い手によって、1億円ほど見え方が違います。アドバイザーにお金を払ってでも、最終的に高く売れたほうがよい。

相談では資料を出して会社の価値を算出し、どの金額なら相手が出そうかを見ます。自分で試したうえでも、第三者であるプロの意見をもらう意味はある。私は最初に事業を売ったとき、いきなりプロには相談しませんでした。だからこそ、そう感じています。

高く良い条件で売るための公式(動画 2:55〜)

高く良い条件で売る公式は「提案する買い手の数×持っていく内容(資料・見せ方)×自分が希望する条件」です。ECの売上を、集客(アクセス数)×転換率×客単価で考えるのと同じ掛け算です。

掛け算の要素中身
提案する買い手の数何社に持っていくか。1社にお願いするより、10社ほどに持っていくほうが可能性は広がる
持っていく内容(資料・見せ方)企業概要書(買い手に会社を紹介する資料)など、会社の見せ方。ECでいう転換率にあたる
自分が希望する条件価格などの希望。相場から離れすぎると、買い手が何社いても決まらない

資料と見せ方は、ECのLP(商品の販売ページ)と同じです。ペラ1枚の紙で紹介するのと、動画や商品のサンプルを見せるのとでは、欲しいと思ってもらえる確率に雲泥の差が出る。私自身、D2Cブランドを売ったときにここで苦労しました。

「決算書には出てこないような数字以外の情報、ブランドの価値。これをなかなか伝えることができず、きつい思いをしたことがあります」(9:34)

希望する条件は、買い手が見る価値とのバランスで決まります。たとえば利益が1,000万円で、価値が3,000万円ほどと見られる会社。それを1億円で売りたいと考える経営者は多くいます。どれだけ多くの買い手に良い会社だと見てもらっても、さすがに高すぎると決まりません。

この公式で考えると、相談先の使い分けも見えてきます。自分で探すと魅力は最も伝えられますが、何十社と面談するのは大変。専門家以外の4つも全部がだめではなく、掛け算を最大にする組み合わせ方で決めます。

2〜3年後に売るなら、準備から始める(動画 4:48〜)

2〜3年後に売るつもりの会社は、今から準備を始めるのがよいと考えています。M&Aは相手がいないと始まらず、相手を見つける用意に時間がかかるためです。

多くの買い手に提案するには、複数の仲介会社に頼む、自分でも探すなど、いくつかの手段があったほうがよい。良い資料を作るにも時間が要ります。見つかりそうな条件で始めることも欠かせません。

M&Aは、よく結婚にたとえられます。マッチングアプリで何人にも会って比べるように、自分も比べ、相手からも比べられる。10人の中から「この人がいい」と思ってもらえるかが大事です。こちらの期待値が高すぎて「付き合うに値する人はいない」と言っていては、相手が何人いても結婚できない。どこで着地するかは、やってみて探っていくものだと思っています。

信頼できるM&A専門家の見極め方(動画 5:49〜)

信頼できる知り合い、紹介、複数の担当者との比較の順に、相談相手を探すのがよいと考えています。売る側には人生で1度か2度のことでも、専門家は毎週のように手がけており、情報に差があるためです。

順番相談相手中身
1信頼できる知り合いM&Aの仕事をしている友人など、信頼できる人がいれば第一優先
2紹介された人1がいなければ、紹介してもらう
3複数の担当者何人かに依頼し、気持ちが合うか、信頼できそうかを担当者ごとに比べる

会社に頼むと担当者しだいになりうるため、できるなら担当者を個人で指名するほうがよいと思います。

実績も判断材料です。件数の実績が多い人ほど、破談(業界では「ブレイク」と言います)を避けやすい。相手が見つかって調べたのに「やはりやめます」となり、1年ほど経ってゼロから探し直す。関わる全員にとって最も良くない展開で、経験した人は多くいます。

ただ、件数が多くても業種に詳しいとは限りません。両方がそろう人は少ないため、一定の実績がある人を優先するのがよいと考えています。30件、100件と手がけた人でも新しい事例に出会う業界なので、業種の経験も相談のときに確かめたほうがよい。

売却の相談はいつから、何を持っていくか(動画 6:37〜)

将来どこかで売るかもしれないと思った時点で、10年後の話でも相談してよいと考えています。早めの相談で、どんな準備をしておけばよいかの解像度が上がるためです。

5年後に売りたいと言っても相手にされないのでは、と考える方もいると思います。私の考えは違います。

「M&Aの商売ってタイミングの商売なんで、5年後に売りたいってなって、そのときに相談してもらえるかがすごく大事」(6:59)

5年後の売却だから相手にしない、というのは違う。専門家は普通に相談に乗り、「まだ早いですね。4〜5年経ったころに会社の情報を見て、相手先を探すなら声をかけてください」と伝えればよいと思っています。最初の相談で用意するものも、多くありません。

段階用意するもの
最初の相談扱っている商品、会社のホームページ、決算書。おおよその見立てが分かる。事業の中身は面談で聞き取る
本気で売ると決めたあとかなりの量の資料。次の段階で用意する

当社(CommerceX M&A)が支援する業種(動画 8:30〜)

当社はEC・小売業に絞ってM&Aを支援しており、それ以外の業種は他社への相談をすすめています。業界の理解があるため、話が早く進みます。

EC・小売業の会社には、売る前に事業の裏側を整え、売りやすくする手伝いができます。共通の言葉が多く、買い手に魅力を伝える資料も作りやすい。決算書に出ない価値を伝えられなかった自分の経験もあって、今の会社を運営しています。

この記事のまとめ

  • 売却先を探す方法は、M&Aの専門家、税理士・銀行、マッチングサイト、自分で探す、取引先の5つ
  • 売却が初めてのときは、まずM&Aの専門家に相談する
  • 公式は「提案する買い手の数×持っていく内容(資料・見せ方)×自分が希望する条件」
  • 専門家は、知り合い、紹介、複数の担当者との比較の順で探し、件数の実績を優先する
  • 相談は10年後の売却でもよい。最初は商品、会社のホームページ、決算書があれば足りる

よくある質問

Q. EC・D2Cの会社を売るとき、最初にどこへ相談すればいいですか。

A. 売却が初めてのときは、M&Aの専門家への相談をすすめます。手数料はかかりますが、買い手によって提示額に1億円ほどの差が出ることがある。自社の価値について、第三者の意見を先にもらえます。

Q. 5年後や10年後に売るつもりでも、相談してよいですか。

A. かまいません。M&Aはタイミングの商売で、売りたくなったときに相談してもらえる関係が大事です。早めの相談で、どんな準備をしておけばよいかがはっきりする。

Q. 実績の多い専門家と、業種に詳しい専門家のどちらを選べばいいですか。

A. 両方がそろう人は少ないため、件数の実績がある人を優先します。実績が多いほど、調査まで進んだあとの破談を避けやすい。業種の経験は、相談のときに聞いて確かめます。

ご相談ください

この記事の結論は「売却が初めてのときは、売ると決める前からM&Aの専門家に相談する」です。まだ売るのは早いかと迷っている段階でも、ご相談いただけます。

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書き手
齋藤 浩喜さいとう ひろき
CommerceX M&A株式会社 代表取締役

2014年より輸入・EC事業で起業。8年間で海外ブランドの日本展開に注力し、累計30以上のブランドの立ち上げ日本展開を行う。

2022年に自ら立ち上げたゴルフブランドPuttOUT事業をCommerceXグループへ事業譲渡。その経験を機に、国内最大手M&A仲介会社に入社。コマース領域のM&A実務に従事した。2026年5月、CommerceX M&A株式会社を設立し代表取締役に就任。同時にCommerceXホールディングス執行役員として、EC・小売領域のM&AとAI活用を推進している。

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