Mycaの買収額は非公表 ── トレカ管理アプリを買ったDMM、半年でPOS導入店は170店舗以上から350店舗に
| 発表日 | 2026年4月14日 |
| 譲受企業 | 合同会社DMM.com(東京都港区・1998年創業) |
| 譲渡企業 | 株式会社Myca(2023年10月設立・資本金864万円)。売り手の株主は発表になし |
| 事業 | トレカ管理アプリ「Mycalinks」(2026年4月14日から「DMMマイカ」)、カードショップ向けPOSレジ、プロチーム |
| 譲渡価額 | 非公表(取得比率も発表に記載なし) |
| スキーム | 発行済株式の取得による子会社化 |
| 出典 | 合同会社DMM.com ニュースリリース(2026年4月14日)・株式会社Myca ニュースリリース(2026年4月14日〜10月16日)・Myca代表の note(2026年4月14日) |
譲渡企業の概要
Mycaは、トレカ(トレーディングカード)の管理アプリ「Mycalinks」を運営する会社です。アプリの提供開始は2023年4月、会社の設立は同年10月。2026年4月14日から、アプリ名は「DMMマイカ」に変わりました。持っているカードの登録、相場に連動した資産額の表示、ECモールでの購入を1つにまとめています。ポケモンカード、遊戯王、デュエル・マスターズ、ワンピースカードゲームなど32ジャンルに対応します(4月14日のリリース)。
展開する事業は3つ。アプリのほか、カードショップ向けのPOSレジ「DMMマイカポス」(旧Mycalinks POS)と、ポケモンカードゲームのプロチーム「DMMマイカプロ」(旧Mycalinks Pro)。モールは、POSを入れた店のカードをアプリの中で買える仕組みです。代表は note で、デッキ用のカードが何店舗回っても揃いにくく、個人間の売買は偽物や詐欺が不安だったことがモールの始まりだったと書いています。
4月14日の発表時点の規模は、ダウンロード数30万超(2026年3月時点)、POS導入170店舗以上、資本金864万円。チームは約25名と代表のnoteは書きます。売上・営業利益・純資産は、確かめた発表にありません。
譲受企業の概要
DMMは、動画配信、電子書籍、アニメ、3Dプリント、EV充電、AIなど60以上のサービスを持ち、会員基盤は5,146万人(2025年2月時点)です。DMMのイノベーションカンパニーCEOは、リリースのコメントで、トレカ市場は国内外で急成長しており、この領域への「本格参入」を楽しみにしていると述べています。
M&Aの目的・背景
DMMが発表で挙げた理由は、急成長するトレカ市場で、Mycaの運営実績とDMMのプラットフォーム力を組み合わせれば、利用者により高い価値を出せるという1文です。「実績」の中身は、国内のトレカ管理アプリでダウンロード数No.1という点。注記は、調査会社Sensor Towerのデータで、期間は2023年4月〜2026年1月、日本のiOSとAndroidの合算、対象はアプリ名または説明文に「トレカ管理」の語を含むアプリで、この定義は発表元の自社調べだと書いています。
取得後の予定は、DMMアカウントとのID連携と、DMM共通ポイントの導入です。
Myca側の理由は、代表のnoteに書かれています。事業が広がるなかで、カード業界のIT化を進めるには、より大きな力が要ると感じたこと。有名な投資会社から出資の話もあったが、アーリーやミドルの段階向けが多く、時期が合わなかったこと。DMMには、60以上の事業、企業としての信用度、運営のノウハウがあること。DMMとの関係は2023年10月にさかのぼり、約2年前から支援を受けていたとありますが、中身(出資か、開発の協力か)は書かれていません。代表は続投し、チームもそのままです。アプリの有料化は行わず、広告バナーも月額課金も置かない方針です。
M&Aの手法・成約内容
DMM.comがMycaの発行済株式を取得し、子会社にしました。2026年4月14日の発表に、取得比率、金額、実行日、売り手の株主、アドバイザーの記載はありません。同日にサービス名が変わり、関連サービスも「DMMマイカポス」「DMMマイカプロ」になりました。既存の機能とユーザーデータは引き継がれます。
買い手は合同会社、売り手のMycaは非上場の株式会社で、適時開示の対象になりません。
買収後の経過
買収後の半年に、持ち主(アプリ)・店(POS)・売買(モール、買取)をつなぐ発表が続きました。出所は、DMM.comとMycaのニュースリリースです。
| 日付 | 出来事 | 数字 |
|---|---|---|
| 2026年4月14日 | 子会社化の発表。「DMMマイカ」へ改称。ID連携と共通ポイントを予告 | ダウンロード30万超(3月時点)・POS導入170店舗以上 |
| 6月2日 | POS導入店舗数を発表 | 200店舗を突破 |
| 6月4日 | 購入カードの自動登録を開始(モールの購入と、POS導入店の実店舗の購入) | — |
| 7月3日 | ウェブ版を公開 | 累計会員数40万人を突破 |
| 8月5日 | 買取サービス「DMMマイカの買取」の事前登録を開始 | — |
| 10月9日 | POS導入店舗数を発表 | 350店舗を突破 |
| 10月16日 | 会員数を発表 | 累計会員登録数50万人(アプリ・ウェブ版) |
6月4日の自動登録は、カードショップのレジで買ったカードが、アプリのマイカードに入る機能です。実店舗ではレジでアプリの会員カードを示す必要があり、一部の店とカードは対象外です。代表は、買ったカードが自動でアプリに入るのを当たり前にしたいと話します。
8月5日の買取は、1回の申込で複数のカードショップが競争入札で査定し、利用者は最も高い額を出した店を選んで売る仕組みです。参加は Myca が認可した店舗に限られ、利用者は本人確認(eKYC)を行い、店には、受け取ったカードの開封から査定までの動画記録が義務づけられます。売却手数料は通常5%で、先行利用の特典は3%。当初は9月末までの申請が対象で、10月16日の発表で延長され、終了時期は未定です。
4月に予告されたDMM ID連携とDMM共通ポイントの導入は、当社が確認したMycaの3本の発表(7月3日・10月9日・10月16日)に、開始を告げる記載がありません。公式サイトとECモールのトップにも、DMM IDやDMM共通ポイントの案内はありません(10月16日確認)。
この値段は、どう説明できるか
Mycaの値段は、確認できたどの資料にも出ていません。見た資料と結果は次のとおりです。
| 見た資料 | 結果 |
|---|---|
| DMM.comのリリース、Mycaのリリースと会社概要、代表のnote(いずれも2026年4月14日) | 取得比率・金額・実行日・売り手の記載なし。分かるのは設立(2023年10月)と資本金(864万円)だけ |
| 売り手側の上場企業の開示 | 検索した範囲で見つからず |
| 決算 | Mycaの決算公告は、検索した範囲で見つからず。会社法第440条が決算の公告を求めるのは株式会社で、合同会社のDMM.comには当たらない |
取得比率が分からないため、100%に換算した評価額も出せません。分解に使う売上、利益、純資産もありません。
外から追えるデータは、Mycaが出した導入店舗数と会員数だけです。POS導入店舗は、4月14日の「170店舗以上に導入」から10月9日の「累計導入店舗数350店舗」へ、およそ2倍(約半年)。会員数は、7月3日の40万人から10月16日の50万人です。ただし、4月の30万はダウンロード数、7月の40万は累計会員数、10月の50万はウェブ版を含む累計会員登録数と、指標の名前が変わります。そのままは比べられません。
どちらも売上や利益ではなく、値段の根拠にはなりません。確認できる料金の数字は、買取の売却手数料5%(先行利用期間は3%)だけ。POSの料金とモールの手数料は、確かめた発表に出ていません。
買い手が読み取れること
DMMが言葉にしたのは「買収先のここ」と「自社の力」までで、「こう伸ばす」は2つの予告にとどまります。当社(CommerceX M&A)は、買収の検討の最初に「買収先のここを、自社のこの力で、こう伸ばせる」を一文にします。DMMの発表に当てはめると、買収先のここは「トレカ管理アプリの運営実績と、POSでつながる店」、自社の力は「60以上のサービスと5,146万人の会員基盤」、こう伸ばすは「ID連携と共通ポイント」です(当社の当てはめ)。自社が同じ判断をするなら、金額の前に、3つ目を数字で置けるかを確かめます。
無料のアプリを起点にする事業では、会員数がそのまま売上になるとは限りません。当社は、払う上限を対象単体の価値までに置き、自社の会員基盤に載せた上積みは、買い手の取り分として別に数えます。Mycaの単体の価値を置くには、売上の内訳(POS、モール、買取)、1店舗あたりのPOS収入、モールの流通額と手数料率、買取の成約額が要ります。どれも開示がないため、買い手が取りにいく数字です。
「国内No.1」は、定義を読んでから使います。対象は、名称か説明に「トレカ管理」の語を含むアプリです。この語を使っていない相場確認や売買中心のアプリは、順位の比較に入っていません。買う側は、自社が見たい指標(月間の利用者、購入した人の数)で取り直します。
二次流通は、信用の仕組みが事業の価値です。買取は認可店舗だけで、本人確認と動画記録を求め、POSには盗難カードの検知機能があります。代表がDMMを選んだ理由にも、企業としての信用度が入っています。買い手は、偽物・盗難・紛争の件数と対応、認可の基準、動画記録の保管期間、相場データの取得元と使用の条件を確かめます。
DMMとMycaは、買収の前から関係がありました。代表のnoteは、DMMとの関係が2023年10月にさかのぼると書きます。当社は、買収の前に前オーナーとの信頼を作っておくほど、引き継ぎの摩擦は小さくなると見ます。出資や支援で先に関われば、その助走になります。出資と融資で3年8か月かけて内側から確かめた事例に、江崎グリコのGreenspoonがあります。
買収後の伸びは、元からの伸びと外から分けられません。10月9日の発表は、350店舗を超えた背景に店舗の声をもとにした機能改善を挙げ、主な機能と今後の展望に、Shopify・おちゃのこネット・DMMマイカモールとのEC連携と、宅配買取による在庫確保を並べます。DMM ID連携やDMM共通ポイントは出てきません。買収前の月次の導入店舗数は開示されていません。買う側は、取得前の月次を取って分けます。
よくある質問
Q. DMMは、いくらでMycaを買ったのですか。
A. 非公表です。DMM.comのリリース、Mycaのリリース、代表のnoteのいずれにも、取得比率と金額はありません。買い手は合同会社、売り手は非上場の株式会社で、適時開示の対象になりません。
Q. なぜDMMは、トレカ管理アプリを買ったのですか。
A. 発表の理由は、急成長するトレカ市場で、Mycaの運営実績とDMMのプラットフォーム力を組み合わせるためです。取得後の予定は、DMM ID連携とDMM共通ポイントの導入です。
Q. 値段が非公表のとき、買い手は何を見ますか。
A. 発表の理由、買収後に出た数字、課金の仕組みの順に見ます。Mycaで出ているPOS導入店舗数と会員数は、売上や利益ではありません。単体の価値は、売上の内訳、POSの料金、モールの手数料から自社で置きます。
Q. 上場していない会社同士の取引は、どこで分かりますか。
A. 当事者の発表です。この事例では、DMMとMycaのニュースリリース、代表のnote、公式サイトが一次資料でした。CX BASEでは、買いニーズを登録いただいた企業へ、条件に合う案件を公開前にご案内しています。
ご相談ください
値段が見えない買収は、買い手が「何を、自社のどの力で伸ばすか」を先に言葉にして、単体の価値を自分の数字で置けるかで決まります。
CX BASEの扱いは、EC・小売・D2C領域の譲渡案件。買収のご相談をいただいた企業には、条件に合う案件を公開前にご案内します。
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出典
- 合同会社DMM.com ニュースリリース「トレカ管理アプリ最大手の株式会社MycaがDMMグループへ参画 サービス名称を「DMMマイカ」へリニューアル」(2026年4月14日公表・2026年10月16日確認)
- 株式会社Myca ニュースリリース(PR TIMES):2026年4月14日・6月2日・6月4日・7月3日・8月5日・10月9日・10月16日(いずれも2026年10月16日確認)
- Myca 代表のnote「カードが好きすぎて気づいたらDMMのグループ会社になっていた話」(2026年4月14日公表・2026年10月16日確認)
- 株式会社Myca「DMMマイカ」公式サイト(myca.cards)・ECモール(myca.dmm.com)トップページ(2026年10月16日確認)
- 会社法 第440条(決算の公告)(2026年10月16日確認)
(「およそ2倍」は、4月14日の「170店舗以上」と10月9日の「350店舗」の比(350÷170=約2.06)で、当社計算です。会員数は指標が違うため、倍率を出していません)