コードミーに約1.5億円 ── 非公表の値段を、エステーのキャッシュ・フロー計算書から逆算する
| 発表日 | 2023年10月4日(コードミーの発表は10月5日)。有価証券報告書の沿革は取得を2023年9月と記載 |
| 譲受企業 | エステー株式会社(東証プライム 4951) |
| 譲渡企業 | 株式会社コードミー(2017年4月設立・神奈川県横浜市) |
| 事業 | アロマ空間デザイン、企業向けオリジナルグッズ制作、フレグランスD2C(ブランド名「CODE Meee」) |
| 譲渡価額 | 約1億5,100万円(議決権100%・当社の逆算)。発表文に金額はなく、有価証券報告書の連結キャッシュ・フロー計算書の支出から読んだ額 |
| スキーム | 株式取得(100%)。連結の範囲に入れない非連結子会社 |
| 出典 | エステー ニュースリリース(2023年10月4日)・第77期〜第79期有価証券報告書 |
(出典:エステー株式会社 公式サイトのニュースリリース「アロマ空間デザイン事業を手掛ける「株式会社コードミー」の株式を取得し子会社化」2023年10月4日・2026年10月16日時点の画面)
(出典:株式会社コードミー「CODE Meee」公式サイト・2026年10月16日時点の画面)
譲渡企業の概要
コードミーは、香りの創作とデータを使い、企業向けの空間演出と個人向けのEC販売を行う横浜のスタートアップです。2017年4月5日の設立で、資本金は2,044万8,000円(2023年1月時点)。事業は、アロマ空間デザイン、企業向けオリジナルグッズ制作、フレグランスD2Cの3つです(エステーのリリース)。
公式サイトは、D2Cで蓄積する香りの好みのデータと、脳波などにもとづく相関データを、法人向けの香りの創作に使うと説明しています。個人向けには、AIとSNSで香りを選ぶ「CODE Meee ONE」(2019年2月提供開始)があります。
対象企業の売上高・営業利益・純資産は、エステーの開示にないため、過去3期分の表は書けません。
譲受企業の概要
エステーは、消臭芳香剤「消臭力」や防虫剤「ムシューダ」を持つ日用品メーカーです。1948年の設立で、東証プライムに上場しています。コードミーを取得した2024年3月期の連結売上高は444億7,200万円、営業利益は13億4,100万円。2026年3月期は売上高484億9,200万円、営業利益19億8,600万円です(有価証券報告書)。
第77期の有価証券報告書は、10年後の姿を「日用品メーカーからウェルネス・カンパニーへ」と定め、「かおり×ウェルネス」の領域に投資を集める方針で、「M&A・成長投資」を成長の土台に挙げています。
M&Aの目的・背景
狙いは、コードミーの空間演出の事業基盤、香りを創作する機能、システム開発機能を、エステー主力のエアケア事業と組み合わせることです。エステーのリリースは、コードミーのビジョンへの共感と、事業戦略・成長性の評価を挙げ、組み合わせにより大きな相乗効果が見込めると書いています。エステーは「空気をかえよう」をスローガンに、ウエルネスやヘルスケア、アロマ空間デザインの領域へ事業を広げる方針です。
発表文の目的に、D2Cの会員基盤や販売チャネルを挙げた記述はありません。D2Cは事業内容の1つとして出てくるだけです。コードミーは10月5日のお知らせで、スタートアップのスピードとエステーの「空気ビジネス」の総合力を生かし、新規事業の創出を加速すると述べました。
M&Aの手法・成約内容
エステーはコードミーの株式を100%取得し、連結の範囲に入れない非連結子会社にしました。有価証券報告書は、日本かおり研究所とコードミーの2社を、小規模で連結財務諸表への影響が重要でないとして連結から除いたと書いています。
取得価額、取得株式数、アドバイザー、取得の日は、発表文に記載がありません。有価証券報告書の沿革は、取得を発表より前の「2023年9月」と書いています。
この値段は、どう説明できるか
取得額は、当社の逆算で約1億5,100万円です。発表文に金額はなく、2024年3月期の有価証券報告書の2か所から読みました。
| 項目 | 金額 | 場所 |
|---|---|---|
| 子会社株式の取得による支出(2024年3月期・前期は「-」) | 1億5,100万円 | 連結キャッシュ・フロー計算書の投資活動 |
| 子会社株式の増加(2023年3月末5億2,800万円→2024年3月末6億8,000万円) | 1億5,200万円 | エステー単体の有価証券関係の注記 |
2024年3月期に増えた非連結子会社はコードミー1社です(連結の範囲の注記)。この支出がすべてコードミーの株式に払ったものなら、取得額は約1億5,100万円になります。支出に取得費用が含まれるか、代金の後払いがあるか、1百万円の差の理由は、開示にありません。
のれんも、純資産の何倍かも、営業利益の何年分かも出せません。連結に入れない会社は企業結合の注記がなく、受け入れた資産と負債、のれん、償却年数が開示に出ないためです。取得比率は100%で、換算は不要です。
出せるのは、買い手にとっての取得額の重さ(当社試算)です。
| 比べる相手 | 金額 | 取得額の割合 |
|---|---|---|
| 営業利益(2023年3月期・発表時点の直近の通期) | 24億1,600万円 | 6.3% |
| 営業利益(2024年3月期・取得した期) | 13億4,100万円 | 11.3% |
| 現金及び現金同等物(2023年3月末) | 140億400万円 | 1.1% |
| 純資産(2023年3月末) | 329億6,100万円 | 0.5% |
同じ香りの会社でも、ZOZOがHigh Linkに払った代金は49億5,000万円で、エステーの約33倍です。ただしZOZOの直近の通期(2026年3月期)の営業利益に対する割合は約7%で、エステーの6.3%と近く、買い手にとっての重さは同じ水準です(High Linkに49.5億円)。
違いは、買ったものと会計の姿です。ZOZOは自社の販路にフルボトルを流す前提で、のれん46億3,200万円(暫定)を7年で償却します。エステーが取り込んだのは、創作とシステム開発の機能と、空間演出の事業基盤で、非連結のためのれんも償却もコードミーの損益も連結に出ません。
取得後の開示:連結に入れないままの3期
コードミーは、2024年3月期から2026年3月期まで3期の有価証券報告書で、非連結子会社のままです。2026年3月期末の非連結子会社は、コードミー、日本かおり研究所、PetBit(2025年4月取得)の3社。持分法も適用していないため、コードミーの損益は連結の損益計算書に出ません。
のれんの償却、減損、コードミーの株式の評価損を示す記載は、3期とも見当たりません。
コードミーは社名とブランド「CODE Meee」を残し、会社概要の代表者は創業者の太田賢司氏、親会社の欄にエステーが入っています。取得後の動きは、両社の発表から読み取れます。
- 2025年10月24日:コードミーのお知らせ。大阪・関西万博のパソナグループのパビリオンと「恐竜王国福井」で、エステーグループの取り組みとして香りの創作と演出を担当
- 2026年6月23日:エステーのリリース。パソナグループの滞在型未病リトリート施設(淡路島)のフレグランスの創香に、「エステー100%子会社の株式会社コードミーの技術を活用しています」と記載。2025年8月にパソナグループと結んだ基本合意書にもとづく取り組み
取得時に挙げた「香りを創作する機能」を、エステーの案件で使った例です。売上と利益への寄与は、開示にありません。
買い手が読み取れること
非公表の値段は、買い手の有価証券報告書から追えます。見る場所は、連結キャッシュ・フロー計算書の「子会社株式の取得による支出」と、単体の子会社株式の増減です。コードミーのように連結しない会社の取得は、企業結合の注記が見当たらないため、この2か所が手がかりです。ただし、その期に取得した会社が1社で、支出に費用が混ざっていない場合に限った読みです。当社は、この手順で出した額を、当事者が発表した額とは分けて扱います。
払う上限は、単体の事業の価値までです。当社(CommerceX M&A)は、単体の価値と自社に入れた後の価値を分けて持ち、統合後の伸びは買い手の取り分として価格に含めません。コードミーの損益は開示されず、倍率で単体の価値を説明できません。比べる相手になるのは、創作を担う調香の人材、システム開発のチーム、法人の取引先を、自社で同じ水準まで育てる年数と人数です。
検証するのは、機能が人と契約のどちらに付いているかです。コードミーの公式サイトは、導入後に定期的な保守とフレグランスオイルの補充に伺うと説明しています。確かめるのは、法人とD2Cの売上の割合、創作を担う人数と属人性、継続契約の更新率。コラボ商品は相手の知的財産の許諾に頼るため、株主が変わっても契約が続くかも見ます。
連結に入れない買収は、成果が外から読めません。3期の有価証券報告書には、のれんも償却も評価損の記載もなく、コードミーが何を稼いだかは数字に出ません。成果が見えるのは、万博とパソナ向けの香りという事業の動きの側です。第77期の有価証券報告書は、M&Aの実施後に、相乗効果を作るための社内の分科会を各分野で行うと書いています。連結の外に置く場合も、社内で成果を追う指標を、取得の時点で決めます。
金額の前に、買収の目的を一文で言い切れるかを確かめます。当社は、「買収先のここを、自社のこの力で、こう伸ばせる」を1文に書けるかを、値段を置く前に確かめます。エステーなら、買収先の創作・システム開発・空間演出の基盤を、エアケア事業と研究開発の力で、アロマ空間の事業へ伸ばす、と書けます。
よくある質問
Q. エステーは、いくらでコードミーを買ったのですか。
A. 発表文に金額はありません。2024年3月期の有価証券報告書では、連結キャッシュ・フロー計算書の子会社株式の取得による支出が1億5,100万円、単体の子会社株式の増加が1億5,200万円です。その期に増えた子会社はコードミー1社で、当社はこれを取得額の目安と読みます。費用の内訳は開示にありません。
Q. なぜ日用品メーカーが、香りのスタートアップを買ったのですか。
A. 発表文が挙げる理由は、コードミーの空間演出の事業基盤、香りを創作する機能、システム開発機能を、エアケア事業と組み合わせることです。D2Cの会員基盤は理由に挙がっていません。
Q. 非連結子会社を買うと、会計は何が変わりますか。
A. エステーの有価証券報告書では、コードミーの損益は連結の損益計算書に出ず、のれんと償却の記載もありません。持分法も適用していません。取得額は、キャッシュ・フロー計算書と単体の子会社株式の増減で追えます。
Q. 取得後、コードミーはエステーに統合されましたか。
A. 3期の有価証券報告書では非連結子会社のままです。社名とブランドは残り、代表者は創業者の太田賢司氏。2025年に万博の香りの創作と演出を担当し、2026年にはエステーのパソナ向けフレグランスに、その技術が使われました。
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エステーは、損益を連結に入れない小さな買収で、香りを創作する機能を取り込みました。CX BASEの扱いは、EC・小売・D2C領域の譲渡案件です。買いニーズを登録いただいた企業には、条件に合う新着案件のご案内と、公開前の個別打診が届きます。登録に費用はかかりません。
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出典
- エステー株式会社 ニュースリリース「アロマ空間デザイン事業を手掛ける「株式会社コードミー」の株式を取得し子会社化」(2023年10月4日公表・2026年10月16日確認)
- エステー株式会社 第77期有価証券報告書(2024年6月18日提出)・第78期有価証券報告書(2025年6月16日提出)・第79期有価証券報告書(2026年6月17日提出)(いずれも2026年10月16日確認)
- エステー株式会社 決算短信補足資料(2024年3月期・2024年5月7日公表/2025年3月期・2025年5月9日公表)(2026年10月16日確認)
- エステー株式会社 PR TIMES「6月開業のパソナグループ滞在型未病リトリート施設『THE PASONA natureverse retreat』にオリジナルフレグランスを提供」(2026年6月23日公表・2026年10月16日確認)
- 株式会社コードミー 公式サイト(codemeee.com)の会社概要・沿革・事業情報とお知らせ(2023年10月5日「エステー株式会社とのM&Aに合意し、子会社化へ」・2025年10月24日「『大阪・関西万博』のパビリオンで、香りの演出を担当しました」)(2026年10月16日確認)
- 株式会社ZOZO 決算短信(High Linkの取得。数字は当社の事例記事「High Linkに49.5億円」と同じ)
(取得額の約1億5,100万円は、有価証券報告書(2024年3月期)の連結キャッシュ・フロー計算書の「子会社株式の取得による支出」からの当社の逆算で、発表文に金額はありません。単体の子会社株式の増加1億5,200万円は、2024年3月末の6億8,000万円と2023年3月末の5億2,800万円の差です。割合は取得額を各項目で割った当社試算で、現金及び現金同等物と純資産は連結の期末の値。ZOZOは代金49億5,000万円を2026年3月期の営業利益693億6,600万円で割った約7%です)