M&Aニュース2021年8月 実行書き手:齋藤 浩喜

キャリーオンの取得額は非公表 ── カイタックファミリーは約7か月後に吸収合併し、買取点数は80万点から200万点になった

発表日2021年8月5日(キャリーオンのお知らせの日付)。吸収合併は2022年3月1日
譲受企業株式会社カイタックファミリー(カイタックグループの総合アパレルメーカー・岡山市)
譲渡企業株式会社キャリーオン(東京都・2013年にサービス開始)
事業子供服の買取・販売コミュニティ「キャリーオン」
譲渡価額非公表(取得比率も開示なし)
スキーム子会社化(2021年8月)、その後に吸収合併(カイタックファミリーが存続)
出典キャリーオン ニューリリース・カイタックグループ 公式サイト・国税庁 法人番号公表サイト

キャリーオン ご利用案内ガイド ニューリリース (出典:キャリーオン「ご利用案内ガイド」ニューリリース・2026年10月16日時点の画面)

カイタックグループ ブログ (出典:カイタックグループ 公式サイト ブログ(2021年12月22日)・2026年10月16日時点の画面)

譲渡企業の概要

キャリーオンは、着られなくなった子供服をまとめて買い取り、次に着る人へ売るサービスです。サービス開始は2013年(環境省の事例集)。運営会社は東京都の株式会社キャリーオンでした。

仕組みは、カイタックグループのブログが書いています(2022年2月16日)。不要な服を買い取って「ポイント」を付与し、そのポイントで新しい子ども服を買う。買取はブランド服が中心で、状態のよい服が集まるため通販サイトとしての魅力も高い。「子ども服を大切にしたい」という考えに共感する母親たちの会員基盤が強み、という説明です。

取得の前に、キャリーオンは2018年4月に1億円の第三者割当増資を実施し、2019年4月には子供服メーカーとコラボしたブランド新品の流通サービスを始めました(キャリーオンのお知らせ)。

決算の数字は、確認できた資料にありません。買取点数が80万点を超えたと発表したのは2021年7月20日で、子会社化のお知らせの16日前です。

譲受企業の概要

カイタックファミリーは、メンズ・レディース・キッズのカジュアルウェア、デニム、パジャマ、インナーウェアなどを扱う総合アパレルメーカーです。設立は1963年、2025年2月期の売上高は452億円(環境省の事例集に載った同社の記載)。

カイタックグループは、岡山を拠点に1948年に創業しています(グループの沿革)。WWD JAPAN(2018年2月14日)によると、持株会社のカイタックホールディングスが、カイタックトレーディング、カイタックファミリー、カイタックインターナショナルの3事業会社を束ねます。

M&Aの目的・背景

取得の理由を直接述べた発表は、確認できた資料にありません。取得を伝える公式の文言は2つだけです。キャリーオンのお知らせの見出し「株式会社カイタックファミリーの子会社になりました。」(2021年8月5日)と、カイタックグループの沿革の「株式会社キャリーオンがグループに加わる」(2021年の項)。前者のリンク先はカイタックグループのトップページで、取得の説明はありません。

取得の後に、カイタックグループのブログが2本出ています。2021年12月22日のブログは、アパレル業界の環境問題に企業として一定の責任を負うと書き、ものづくりのグループとリユースの会社の組み合わせへの期待を示しました。2022年2月16日のブログは、ポイントの仕組み、ブランド服中心の品ぞろえ、母親たちの会員基盤をキャリーオンの強みに挙げました。

カイタックファミリーは環境省の事例集で、この事業の理由を説明しています。子ども服は多数のアイテムが必要な一方で必ず不要になるため、シェアのビジネスに一定のニーズがあると考えた、という内容です。サービスを続ける理由の説明で、買収の理由を述べた文ではありません。

M&Aの手法・成約内容

取得は子会社化から始まり、約7か月後の吸収合併で法人が1つになりました。

日付出来事出典
2021年7月20日買取点数80万点を突破したと発表キャリーオン
2021年8月5日「株式会社カイタックファミリーの子会社になりました。」キャリーオン
2022年1月18日本店を東京都港区から目黒区東山1丁目へ移転国税庁
2022年2月12日テレビCMの放映を開始(静岡県・岡山県・香川県・福岡県)キャリーオン・カイタックグループ
2022年3月1日カイタックファミリーがキャリーオンを吸収合併し、キャリーオンは解散国税庁

取得価額、取得比率、算定方法、アドバイザーの記載は、確認できた資料にありません。国税庁の法人番号公表サイトは、キャリーオンが令和4年3月1日にカイタックファミリー(岡山市北区・法人番号7260001001717)へ合併し解散したと記録します。カイタックファミリー側にも同日にキャリーオンを合併した記録があり、存続したのはカイタックファミリーです。

合併の42日前に移った本店の番地(目黒区東山1丁目8-14)は、現在のキャリーオンの特定商取引法表示にある販売業者(カイタックファミリー)の所在地と同じです。サービス名は残り、カイタックグループの公式サイトのブランド一覧に、カイタックファミリーのアパレルブランドの1つとして「キャリーオン」が載っています。

この値段は、どう説明できるか

値段は、見た資料のどこにも出ていません。見た資料と結果は次のとおりです。

見た資料結果
キャリーオンのお知らせ(2021年8月5日)見出し1行。取得価額・比率の本文なし
カイタックグループの沿革・ニュース・ブログ「グループに加わる」「仲間入り」の記載のみ。金額なし
国税庁 法人番号公表サイト吸収合併の日付のみ
環境省の事例集(カイタックファミリー)同社全体の売上高452億円、会員数、買取点数。キャリーオン単体の売上なし
カイタックファミリーの有価証券報告書・適時開示確認できず

金額の推測は書きません。代わりに、キャリーオンが10万点ごとに発表している買取点数を、取得の前後で同じ物差しにそろえて並べます。

グループ入りの前後で、買取の増え方を比べる

子会社化から約2年は、買取の増え方は取得前とほぼ同じで、速くなったのは2023年8月以降です。発表日の間隔で割った1年あたりの増え方(当社計算)は次のとおり。

区間(発表日)日数増えた買取点数1年あたり
50万点→80万点(2020年1月29日〜2021年7月20日)取得の前538日30万点約20万点
80万点→120万点(2021年7月20日〜2023年8月21日)取得の後の約2年762日40万点約19万点
120万点→200万点(2023年8月21日〜2026年2月10日)904日80万点約32万点

この間の2022年2月に、テレビCMの放映が始まっています。増え方の変化の理由を説明した開示はなく、取得の効果と言える根拠はありません。買取点数は累計の個数で、勢いが落ちても減らないため、区間ごとの増え方で見ます。会員数は、2026年1月時点で15万人超です(環境省の事例集)。

買い手が読み取れること

値段が非公表の取得は、取得の前後を同じ物差しで並べて読みます。キャリーオンの1年あたりの増え方(当社計算)は、取得後の約2年が約19万点で取得前の約20万点とほぼ同じ、約32万点に上がったのは2023年8月以降でした。買った直後に数字が跳ねる前提は置けません。自社が同じ判断をするなら、事業計画の最初の2年は取得前の増え方で置き、上積みは根拠ができた分から足します。

取得の理由が公式に語られていないときは、一文で言える形かを自分で確かめます。公式の言葉から作れるのは「ものづくりのグループが、リユースの買取と会員の仕組みを持つ」までで、何をどう伸ばすかは開示にありません。当社(CommerceX M&A)は、金額を置く前に「買収先のここを、自社のこの力で、こう伸ばせる」を一文にします。

ものづくりの会社がリユースの会社を持つ組み合わせの上積みは、値段の根拠にしません。当社の見解では、払う額は対象の単体の事業の価値までです。新品を作る側の力を足した上積みは、実現するまで数字にならないためです。キャリーオンは取得の前から、子供服メーカーとコラボしたブランド新品の流通を始めていました(2019年4月)。メーカーとの接点がすでにあったことは、確認の材料になります。

買取点数は個数で、利益ではありません。外から見えない項目が、取得前の確認になります。確かめるのは、1点あたりの買取ポイント、買取から販売までの日数、検品・撮影・梱包の1点あたりの費用、売れ残る割合の4つ。キャリーオンの実数ではなく、買取と再販の事業に共通する項目です。買取代金をポイントで払う仕組みでは、使われていないポイントの残高も会員への支払いの約束になります。残高は開示にありません。

買った会社は、法人ごと残すとは限りません。カイタックファミリーは、キャリーオンを約7か月で吸収合併し、看板だけを残しました。吸収合併では、消える会社の契約や債務を存続する会社が引き継ぎます(会社法第750条)。取得の前に、会員との約束、取引先の契約、許認可、ポイント残高を、合併後の会社へ移せる形で洗い出します。合併後に数字が追えなくなった例はRECLOで、キャリーオンは合併後も買取点数の発表が続いています。

よくある質問

Q. カイタックファミリーは、いくらでキャリーオンを買ったのですか。

A. 開示がありません。キャリーオンのお知らせは「子会社になりました」の見出し1行で、取得価額と比率の記載はありません。カイタックグループの沿革とブログにも金額はなく、国税庁の記録は合併の日付だけです。

Q. キャリーオンは、いまも続いていますか。

A. 続いています。2022年3月1日にカイタックファミリーが吸収合併し、法人としてのキャリーオンは解散しました。サービスは同じ名前で、販売業者はカイタックファミリーです。買取点数は2026年2月10日に200万点を超えたと発表されています。

Q. 金額が非公表の買収は、買い手は何を見て判断しますか。

A. 公表される運営の数字を、取得の前後で同じ物差しにそろえて並べます。キャリーオンは買取点数を10万点ごとに発表しているので、区間ごとの増え方が比べられます。利益、在庫、ポイント残高は外から見えず、取得前の確認項目です。

Q. 子供服のメーカーは、なぜリユースの会社を買うのですか。

A. 取得の理由を述べた公式の発表は確認できません。カイタックグループは、ものづくりのグループとリユースの会社の組み合わせへの期待を書き、カイタックファミリーは、子ども服が必ず不要になる性質からシェアのサービスに需要があると説明しています。

ご相談ください

カイタックファミリーは、キャリーオンを子会社にして約7か月で吸収合併し、看板とサービスを残しました。

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出典

  • 株式会社キャリーオン「ご利用案内ガイド ニューリリース」「特定商取引に関する法律に基づく表記」・サイトの事業内容ページ(いずれも2026年10月16日確認)
  • カイタックグループ 公式サイト 沿革・ブランド(2026年10月16日確認)・ブログ「環境省グッドライフアワード「実行委員会特別賞」受賞」(2021年12月22日公表)・「キャリーオンのCMが放映中「ママの目線」編」(2022年2月16日公表)(いずれも2026年10月16日確認)
  • 株式会社カイタックファミリー 公式サイト ホットトピックス(2026年10月16日確認)
  • 国税庁 法人番号公表サイト 株式会社キャリーオン(5011001094819)・株式会社カイタックファミリー(7260001001717)の変更履歴情報(2026年10月16日確認)
  • 環境省 サステナブルファッション「企業・自治体等による好事例」掲載の株式会社カイタックファミリー「子ども服のシェアリングサービス「キャリーオン」」概要(PDF・2026年2月作成・2026年10月16日確認)
  • WWD JAPAN「カイタックが社名変更と新会長・社長人事を発表」(2018年2月14日公表・2026年10月16日確認)

(買取点数の1年あたりの増え方は、発表日の間隔で割った当社計算で、実際に突破した日とはずれます)

書き手
齋藤 浩喜さいとう ひろき
CommerceX M&A株式会社 代表取締役

2014年より輸入・EC事業で起業。8年間で海外ブランドの日本展開に注力し、累計30以上のブランドの立ち上げ日本展開を行う。

2022年に自ら立ち上げたゴルフブランドPuttOUT事業をCommerceXグループへ事業譲渡。その経験を機に、国内最大手M&A仲介会社に入社。コマース領域のM&A実務に従事した。2026年5月、CommerceX M&A株式会社を設立し代表取締役に就任。同時にCommerceXホールディングス執行役員として、EC・小売領域のM&AとAI活用を推進している。

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