Dari Kの全株式をロッテが取得 ── 金額は非公表。純資産1,668万円の会社に、大手は何を求めたのか
| 発表日 | 2022年1月17日(取得日は2022年1月14日) |
| 譲受企業 | 株式会社ロッテ(東京都新宿区・非上場) |
| 譲渡企業 | Dari K株式会社(2011年3月設立・京都市) |
| 事業 | カカオ豆の輸入・販売、チョコレートの製造・販売(Bean to Bar) |
| 譲渡価額 | 非公表(全株式・100%) |
| スキーム | 株式取得(全株式)。2026年4月1日にロッテへ合併 |
| 出典 | ロッテ・Dari Kの発表(2022年1月17日)・官報の決算公告・国税庁 法人番号公表サイト |
(出典:株式会社ロッテ ニュースリリース(PR TIMES配信)・2026年10月16日時点の画面)
(出典:Dari K 公式サイトのお知らせ(2022年1月17日)・2026年10月16日時点の画面)
譲渡企業の概要
Dari Kは、カカオ豆からチョコレートまで一貫して作るBean to Barの、京都のメーカーです。事業はカカオ豆の輸入・販売、チョコレートと菓子の製造・販売など。従業員は20名(2021年3月)、資本金は1億1,000万円でした(ロッテの発表)。インドネシア・スラウェシ島の農家に栽培を教え、育った豆を買い取ります。直営店は京都の三条本店と東京の丸の内オアゾ店で、オンラインショップでも売ります(公式サイト・2026年10月16日確認)。売上高と営業利益は、どの発表にもありません。財務で確かめられるのは、官報の決算公告の貸借対照表の要旨(下の表)です。
譲受企業の概要
ロッテは、1948年6月設立の非上場の菓子メーカーです。チョコレートは、1964年のガーナミルクチョコレートの発売から主力事業に育てました。資本金は2億1,700万円、従業員は2,493名(2021年3月)。2025年度の売上高は、海外拠点とグループ会社を含めて3,548億円です(ロッテの会社概要)。取得の前に、メリーチョコレートカムパニーとポーランドのウェデル社の株式も取得していました(ロッテの発表)。
M&Aの目的・背景
ロッテが挙げた理由は、品質だけでなく、環境と人権への配慮を客が求めるようになったことです。ロッテはDari Kを、サステナビリティとテクノロジーの両方に特徴がある会社と見ています。目的は、農家と直接関わる独自のサステナブルな調達ノウハウの取得、サステナブルなカカオ豆を使う商品開発、焙煎技術と発酵技術の取得です。
Dari K側の理由は、足りないものを大手メーカーで補い、事業規模を広げることでした。より多くのカカオ豆に関わり、品質の安定した商品を供給するには、規模を広げる過程で新たな課題に直面する、と発表は書きます。足りないものを補える大手と組む案が社内の議論から生まれ、ロッテの技術、製造設備、販売ネットワークを使えば、単独では出せない速さと規模に届くと説明します。
ロッテは自社でも、2015年から「DO Cacao Project」を進めていました。パプアニューギニアの産地で約7年かけたチョコレート「DO Cacao chocolate」を、取得の前日の2022年1月13日に発売しています(ロッテの発表)。作る道と買う道が並びましたが、両者を比べた記述は発表にありません。
M&Aの手法・成約内容
取得は全株式の取得で、取得日は2022年1月14日、発表はその3日後です。売主、取得価額、アドバイザーは、ロッテ、Dari K、インスパイアのいずれの発表にもありません。Dari Kには、出資者のPIEFが2018年12月28日に第三者割当増資で出資していました。インスパイアは2022年1月17日に、ロッテ傘下入りを応援する判断をしたと発表しています。PIEFが売主に含まれるかは、書かれていません。
この値段は、どう説明できるか
金額は非公表で、値段は分解できません。損益と純資産の数字からも、値段を説明する式は組めません。官報の決算公告(貸借対照表の要旨)に、取得の前後4期の数字があります。
| 決算日 | 総資産 | 負債 | 純資産 | 当期純損失 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年12月31日(取得の14日前) | 258,698 | 242,018 | 16,679 | 116,667 |
| 2022年12月31日 | 438,892 | 476,253 | △37,361 | 54,040 |
| 2023年12月31日 | 287,949 | 453,189 | △165,240 | 127,879 |
| 2024年12月31日 | 381,823 | 620,425 | △238,602 | 73,361 |
(単位:千円。官報の決算公告の数字で、負債は流動負債と固定負債の合計(当社試算)。Dari K単体の数字で、売上高・営業利益・インドネシアの現地法人は含みません)
取得の14日前の決算日は、当期純損失が1億1,667万円、純資産が1,668万円。損失が出ている会社に利益の倍率は使えず、純資産が1,668万円では純資産の倍率も意味を持ちません。株主が払い込んだ資本は、資本金1億1,000万円と資本準備金1億円。累積赤字(利益剰余金)は1億9,332万円でした。値段の理由として公式に語られているのは、ロッテが挙げた調達ノウハウ・商品開発・技術の3つだけです。金額は推測しません。
取得後のDari K
ブランドは続き、法人は取得から4年2か月で消えました。
| 時期 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2023年1月 | ロッテ「カカオの恵み」との初のコラボ商品(ガーナ産とインドネシア産の2層) | Dari K |
| 2023年3月29日 | 創業者が代表取締役を退任。後任はロッテの取締役専務執行役員が兼任。理由は発表にない | Dari K |
| 2024年4月1日 | 代表取締役が再び交代 | Dari K |
| 2025年1月 | 良品計画と組み、ライム発酵のカカオを使った商品を無印良品で発売 | Dari K |
| 2025年12月4日 | 本店をロッテ本社の住所(東京都新宿区)へ移す | 国税庁 |
| 2026年4月1日 | ロッテに合併して解散 | 国税庁 |
ロッテが挙げた3点に近い動きは、ロッテのチョコレートとのコラボ商品、発酵技術を使った商品、調達先への支援です。2026年9月8日の発表で、ロッテが展開するdari Kは、スラウェシ島に育苗センターを寄贈しました。所有者は現地パートナーです。焙煎技術がロッテの商品に使われたかは、確認した範囲の公式の発表に見当たりません。
取得後の3期は、すべて純損失でした。純資産は1,668万円から、2022年12月期に3,736万円、2024年12月期に2億3,860万円のマイナスになりました。3期の純損失の合計2億5,528万円(当社試算)は、純資産の減少額とほぼ同じです。資本金と資本準備金は4期とも同額で、増資は要旨に出ていません。負債は2億円台から6億円台へ増え、内訳は要旨にありません。
法人は、子会社から、ロッテの事業へ移りました。国税庁の法人番号公表サイトは、2026年4月1日のロッテへの合併による解散を記録します。ロッテの会社概要は、従業員数の注記に「旧Dari K(株)」と書きます。韓国のロッテウェルフードの社債の証券届出書(2024年2月・2025年1月提出)にも、Dari Kは日本のロッテの100%子会社、インドネシアの現地法人P.T. Kakao Indonesia Cemerlangの99.0%の保有会社として載ります(2023年9月30日・2024年6月30日時点)。金額や理由の記載はありません。
買い手が読み取れること
江崎グリコは顧客を、ロッテは調達と技術を買いました。同じ大手のD2C買収でも、狙いが違います(江崎グリコ→Greenspoon)。
| 江崎グリコ→Greenspoon | ロッテ→Dari K | |
|---|---|---|
| 狙い | 顧客と直接つながるD2Cの基盤と、日常の食事の分野 | 農家と直接つながる調達ノウハウと、発酵・焙煎の技術 |
| 金額の開示 | 有価証券報告書に、追加取得分27億7,700万円 | 非公表 |
| 取得前の関係 | 3年8か月の出資と融資 | ロッテの出資は発表に記載なし |
金額が見えなくても、買う理由を一文で言えるかは確かめられます。当社(CommerceX M&A)の見解では、「買収先のここを、自社のこの力で、こう伸ばせる」と一文で言えることを、金額の前に確かめます。ロッテとDari Kの発表を並べると、Dari Kの調達と発酵・焙煎の技術を、ロッテの工場と販売網で広げる、と読めます。
損益で説明できない会社に払う額は、単体の事業の価値までです。取得の14日前のDari Kは、純損失1億1,667万円、純資産1,668万円でした。当社の見解では、払う額は単体の事業の価値までとし、自社の工場や販路が生む上積みは、価格の根拠にしません。
前オーナーの役割は、買収時に決めます。創業者は取得後も代表取締役を続け、1年2か月余りで退任しました。当社の見解では、前オーナーが事業責任者なのか、助言役なのかを買収時に決め、社長を残すなら伴走する自社側の責任者を初日から置きます。
調達の仕組みは、現地の法人と提携先まで確かめます。Dari Kはインドネシアの現地法人の99.0%を持ち、栽培指導、豆の購入と発酵、現地の運営を担う現地パートナーがあると、ロッテは2026年に説明しています。調達ノウハウを買うなら、現地法人の持ち分、提携先との契約、農家との関係が会社に残るかを、契約前に確かめます。
ブランドの継続と、法人の継続は別です。合併で、店舗の賃貸借、取引先との契約、従業員の雇用がどう引き継がれるかを、取得の時点から見ておきます。
よくある質問
Q. ロッテは、いくらでDari Kを買いましたか。
A. 金額は公表されていません。取得は全株式で、取得日は2022年1月14日です。取得の14日前の決算日は、官報の決算公告で純資産1,668万円、当期純損失1億1,667万円でした。
Q. ロッテは、なぜDari Kを買ったのですか。
A. ロッテの発表は、環境と人権への配慮を求める客の変化を挙げ、農家と直接関わる調達ノウハウ、サステナブルなカカオ豆を使う商品開発、焙煎技術と発酵技術を目的にしています。Dari K側は、ロッテの技術・製造設備・販売ネットワークで規模を広げることを理由に挙げています。
Q. 買収のあとも、Dari Kという会社は残りましたか。
A. 子会社として残ったのは4年2か月です。創業者は2023年3月29日に代表取締役を退任し、2026年4月1日にロッテへ合併して解散しました。dari Kのブランドは、ロッテが展開するブランドとして続いています。
Q. ロッテは、自社でもカカオの取り組みをしていたのですか。
A. しています。パプアニューギニアの産地で約7年かけた「DO Cacao chocolate」を、取得の前日の2022年1月13日に発売しました。自社で作る道と買う道を比べた記述は、発表にありません。
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金額が非公表の取得でも、買う理由は、調達と技術という中身で確かめられます。
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出典
- 株式会社ロッテ「Dari K株式会社の株式取得に関するお知らせ」・Dari K株式会社「株式会社ロッテの完全子会社化のお知らせ」(公式サイト・PR TIMES配信)・株式会社インスパイア「PIEF出資先であるDari K株式会社の株式会社ロッテ完全子会社化のお知らせ」(いずれも2022年1月17日公表)
- 株式会社ロッテ「プロジェクト立ち上げから約7年、ロッテの新チョコレートブランドが登場」(2022年1月7日公表)・「ロッテ dari K、インドネシアにカカオの『育苗センター』を寄贈」(2026年9月8日公表)・会社概要
- Dari K株式会社「代表取締役退任ならびに新役員体制のお知らせ」(2023年3月31日公表)・「代表取締役交代のお知らせ」(2024年4月1日公表)・「カカオの恵みコラボ商品発売中」(2023年1月26日公表)・良品計画との協業のPR TIMES配信(2025年1月7日公表)・店舗情報
- 官報 Dari K株式会社 第12期〜第15期決算公告(2022年5月9日〜2025年4月15日付)。官報の原本ページではなく、官報決算データベース(catr.jp)が掲載する公告の画像で読んだ数字です
- 国税庁 法人番号公表サイト「Dari K株式会社」(法人番号 2130001046845)
- ロッテウェルフード株式会社 証券届出書(社債)(2024年2月16日・2025年1月20日提出・韓国取引所の開示サイトKIND)
(上記はいずれも2026年10月16日確認。金額は千円単位の公告の数字を万円に直した値で、端数は四捨五入です。負債は流動負債と固定負債の合計、3期の純損失の合計は、いずれも当社試算です。千円未満の切り捨てで、合計が1千円ずれる決算日があります。取得の金額と売主は公表されていません)