ピコモンテ・ジャパンに4億円 ── 52%を買った粧美堂は、1年後に18%を2.2倍の評価額で買い増した
| 発表日 | 2024年12月20日(株式譲渡の実行 2025年1月10日) |
| 譲受企業 | 粧美堂株式会社(東証スタンダード 7819) |
| 譲渡企業 | 株式会社ピコモンテ・ジャパン(2013年9月設立・大阪府池田市) |
| 事業 | 化粧品のOEM・ODM、輸入代行、自社商品の販売、容器の販売 |
| 譲渡価額 | 4億円(26株・議決権52.0%)。100%換算は7億6,900万円 |
| スキーム | 株式譲渡 |
| 出典 | 粧美堂 適時開示(2024年12月20日) |
譲渡企業の概要
ピコモンテ・ジャパンは、売上25億円・営業利益2億円の、化粧品のOEM受託会社。2013年9月に、化粧品や医薬部外品の輸入代行会社として設立。化粧品と医薬部外品の製造販売業・製造業の許可を持ち、主力は化粧水・乳液・保湿クリームなどの基礎化粧品のOEMです。注文に合わせて海外・国内の工場を選び、処方や容器のデザインをその工場に委託して、検品のうえ納品します。売主は個人。氏名も大株主の構成も非開示です。
| 決算期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 15億7,400万円 | 20億4,200万円 | 24億9,000万円 |
| 営業利益 | 1億3,500万円 | 1億5,300万円 | 2億200万円 |
| 当期純利益 | 9,500万円 | 1億1,000万円 | 1億4,600万円 |
| 純資産 | 2億5,400万円 | 3億6,200万円 | 5億500万円 |
売上高は2期で1.6倍、営業利益率は7〜9%で、3期とも黒字です。表は2024年3月期で止まっており、その後の9か月は開示に入っていません。
譲受企業の概要
粧美堂は、化粧品・化粧雑貨・服飾雑貨などを企画して総合スーパーやドラッグストアへ売る、工場を持たないメーカー。1948年創業の化粧雑貨の卸が源流で、9月決算です。2024年9月期の連結売上高は209億1,900万円、営業利益は10億1,000万円、純資産は65億7,600万円です。
M&Aの目的・背景
狙いは、外部に委託していた化粧品の製造販売業と輸入代行業を、グループの中に持つこと。開示は、化粧品事業をさらに加速するため、この2つの業務を内製化してノウハウを蓄積することが重要だと判断した、と説明しています。粧美堂は2020年10月にも、「真のメーカー化」を掲げて化粧品の工場を持つビューティードアを子会社にしていました。
ピコモンテは、粧美堂の化粧品の開発を共に進めてきた取引先で、粧美堂のモノづくりをよく把握しています。グループに加わると、化粧品の企画・調達が強まり、ほかのカテゴリーにもノウハウが広がる、との説明。開示は、粧美堂がピコモンテから商品を仕入れている一方、資本関係と人的関係はないと書いています。
M&Aの手法・成約内容
26株を4億円で取得し、議決権の52.0%を持ちました。アドバイザリー費用等の概算は600万円で、合計は4億600万円。有価証券報告書の取得関連費用は570万円。対価は現金。評価の方法と算定機関の記載はなく、残る48%の持ち主と扱いも書かれていません。2025年9月末の連結貸借対照表には、残る48%に当たる非支配株主持分3億9,224万円が載っています。
この値段は、どう説明できるか
100%換算の評価額7億6,900万円は、営業利益の3.8倍。連結に計上されたのれんは2,666万円。100%換算は、4億円を52.0%で割った額です。下の表は、開示の最新期(2024年3月期)の純資産で計算した列と、連結開始時(2025年1月)の純資産で計算した列です。
| 項目 | 開示の最新期で計算 | 連結開始時で計算 |
|---|---|---|
| 会社全体の評価額(100%換算) | 7億6,900万円 | 7億6,900万円 |
| うち純資産 | 5億500万円 | 7億1,797万円 |
| 差額(のれん相当) | 2億6,400万円 | 5,126万円 |
| 営業利益2億200万円の何年分 | 1.3年 | 0.25年 |
| 純資産の何倍 | 1.52倍 | 1.07倍 |
開示の数字で割ると、のれん相当は営業利益の1.3年分。年買法(時価純資産+営業利益1〜3年分)は7億700万円〜11億1,100万円で、7億6,900万円は下限を6,200万円上回ります。
連結開始時の純資産(受け入れた資産と負債の差額)は、2024年3月期末の5億500万円より2億1,300万円多い額でした。9か月の利益の積み上がりか、取得時の時価評価によるものかは、開示にありません。この増加で、のれん相当は5,126万円まで縮む。有価証券報告書に載るのれんは2,666万円。日本基準は取得した持分の分だけをのれんにするため、4億円から連結開始時の純資産の52%(3億7,334万円)を除いた額になります。償却は3年の均等償却で年889万円、2025年9月期の連結営業利益の0.6%。
現金は、払った4億円より多く入っていました。連結開始時のピコモンテの現金及び現金同等物は7億2,990万円。連結キャッシュ・フロー計算書では、この取得が3億2,990万円の収入になっています。ただし流動負債も7億2,042万円あり、現金をそのまま余った資金とは言えません。
残り48%のうち18%を、1年後に3億円で買い増した
2026年1月26日、粧美堂は非支配株主から18.0%を3億円で買い、議決権の比率を70.0%にしました。2026年5月15日提出の半期報告書の注記で分かる。目的は、化粧品の企画・調達面の強化と、ほかのカテゴリーでのノウハウ拡大についての連携の強化とされています。追加取得の価格の決め方は、書かれていません。
| 1回目 | 2回目 | |
|---|---|---|
| 日付 | 2025年1月10日 | 2026年1月26日 |
| 取得比率 | 52.0% | 18.0% |
| 取得後の議決権比率 | 52.0% | 70.0% |
| 株式の代金 | 4億円 | 3億円 |
| 100%換算 | 7億6,900万円 | 16億6,700万円 |
| 会計の扱い | 子会社化・のれん2,666万円 | 非支配株主との取引・のれんなし |
100%換算の評価額は、1年16日で2.2倍。2回の合計は7億円で70.0%、100%換算の平均は10億円です。非支配株主持分は、9月末の3億9,224万円から3月末の2億9,939万円に減りました。半期の利益7,502万円を足すと、追加取得で約1億6,800万円が減った計算です(当社試算。配当などほかの増減がないとした場合)。
追加取得は、のれんになりません。支配を得たあとの追加取得は非支配株主との取引として処理し、払った額と減った非支配株主持分の差は資本剰余金の減少で、損益に出ない。この事例では、払った3億円に対し減った持分が約1億6,800万円で、差は約1億3,200万円です。残る30%は、非支配株主が持っています。
リベルタのアフラ買収と並べると
工場を持たない買い手が化粧品OEMの会社を買った取引は、リベルタ→アフラにもあります。
| 粧美堂 → ピコモンテ | リベルタ → アフラ | |
|---|---|---|
| 取得比率 | 52.0%(のち70.0%) | 100.0% |
| 株式の代金 | 4億円 | 1億8,000万円 |
| 営業利益(開示の最新期) | 2億200万円 | 2,100万円 |
| 100%換算 ÷ 営業利益 | 3.8倍 | 8.6倍 |
| 連結に計上されたのれん | 2,666万円 | 1億3,156万円 |
| のれんの償却 | 3年 | 5年 |
| 買う前の関係 | 取引あり(粧美堂が仕入れ) | なし |
同じ形の取引で、値段と負担が大きく違いました。リベルタは、のれん1億3,156万円を5年で償却し、年2,631万円が連結営業利益の約2割。粧美堂は年889万円で、連結営業利益の0.6%です。2社の差が何で生まれたかは、どちらの開示にも書かれていません。
取得後の数字
取得後9か月の子会社の純利益は、約9,900万円。非支配株主に帰属する当期純利益4,761万円を48%で割り戻した当社試算で、連結上の調整を含む。2024年3月期は12か月で1億4,600万円でした。売上は連結売上高の10%以下で、損益は個別に開示されていません。
2025年9月期の粧美堂の連結は、売上高221億2,200万円(前期比5.7%増)、営業利益14億6,900万円(同45.5%増)。決算説明資料は、販管費の増加にピコモンテの人件費が含まれると説明しています。2025年9月期第2四半期の資料では、連結粗利率の改善4.2ポイントのうち0.7ポイントが、ピコモンテの連結の影響です(社内管理用の数値)。
同じ期に、粧美堂は2020年に買ったビューティードアを4億4,650万円で売却。理由は、想定した効果が得られなかったことです。有価証券報告書は、この売却とピコモンテの取得を「グループ会社の再編」として並べています。
買い手が読み取れること
残り持分の値段は、最初の契約で決める。粧美堂が70.0%に払った総額は7億円で、100%換算の平均は10億円。1回目の評価額より3割高く、2回目だけなら2.2倍です。最初の開示に追加取得の取り決めはなく、2回目の価格の決め方も書かれていません。当社(CommerceX M&A)が売り手側で入るときは、基本合意の段階で決められる論点を全部決める。買い手の側も同じで、残り持分の価格の決め方と期限は、最初の契約に書いておきます。
3分の2を超えるかどうかで、買収後にできることが変わります。合併や定款変更などの特別決議は、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が要る。52.0%の間は、残る48%が反対すれば通らず、70.0%になれば粧美堂だけで通せます。開示された追加取得の目的は連携の強化。グループの再編を考えるなら、残す比率はその計画と合わせて決めます。
取得日の純資産は、開示の3期表から動いています。のれん相当は2億6,400万円から5,126万円に縮みました。価格が固定のまま純資産が減れば、減った分がのれんになり、償却で費用になる。取得日の純資産に価格を連動させる条項を入れるか、契約直前の純資産を確かめます。現金7億2,990万円に対して流動負債も7億2,042万円あり、運転資金に要る額を見積もってから、余る現金を決めます。
取引先を買うと、自社との取引は連結で消えます。ピコモンテの売上のうち粧美堂向けは、連結売上高に足されない。粧美堂の資料では、連結粗利率の改善のうち0.7ポイントが、ピコモンテの連結の影響です。自社向けの売上の割合と、自社以外の取引先の契約は、開示にない。OEMは発注元の判断で売上が変わるため、取引先別の売上と契約を、契約前に確かめます。
よくある質問
Q. 52%だけ買うとき、値段はどう見ればよいですか。
A. 取得比率で割って100%換算します。この事例は4億円を52.0%で割り、7億6,900万円で、営業利益2億200万円の3.8倍、純資産5億500万円の1.52倍です。
Q. 残りの48%は、その後どうなりましたか。
A. 1年後の2026年1月26日に、粧美堂が18.0%を3億円で追加取得し、議決権の比率は70.0%になりました。100%換算は16億6,700万円で、1回目の2.2倍。残る30%は非支配株主が持っています。
Q. 追加取得の3億円は、のれんになりますか。
A. なりません。支配を得たあとの追加取得は、非支配株主との取引として処理します。払った3億円と、減った非支配株主持分の差は、資本剰余金の減少。損益にも出ません。この事例では約1億3,200万円と読めます(当社試算)。
Q. 4億円規模の譲渡案件は、どこで見つかりますか。
A. 公表されるのは、買い手が上場企業で、開示した取引に限られます。開示の対象にならない譲渡は、公表されないまま成立する。CX BASEでは、買収のご相談をいただいた企業へ、条件に合う譲渡案件を公開前にご案内しています。
ご相談ください
過半数だけを買うと、残りの持分の値段が後から決まる場合があります。この事例は1年後に2.2倍。取得日の純資産と残り持分の取り決めは、契約の前に決めます。
CX BASEは、EC・小売・D2C領域の譲渡案件を扱っています。買収のご相談をいただいた企業には、条件に合う案件を公開前にご案内します。
売却をお考えの方は、買い手が見る取得日の純資産と残り持分の取り決めを、条件の整理からご説明します。
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出典
- 粧美堂株式会社「株式会社ピコモンテ・ジャパンの株式の取得に関するお知らせ」(2024年12月20日公表・2026年10月16日確認)
- 粧美堂株式会社「2025年9月期 決算説明会資料」(2025年11月25日公表)、「2025年9月期第2四半期 決算説明会資料」(2025年5月29日公表)(2026年10月16日確認)
- 粧美堂株式会社「有価証券報告書 第77期(2025年9月期)」(2025年12月18日提出)、「半期報告書 第78期中(2025年10月1日〜2026年3月31日)」(2026年5月15日提出)(2026年10月16日確認)
(金額は株式の代金です。1回目は取得比率52.0%、2回目は18.0%で、それぞれ100%に換算しています。アドバイザリー費用等の概算600万円を含む総額は4億600万円。財務数値は決算書ベース(利益修正前)。「連結開始時で計算」の純資産7億1,797万円は、有価証券報告書の企業結合注記の受け入れ資産15億4,903万円と負債8億3,106万円から求めた当社計算で、のれん2,666万円は同じ注記の数字です。「約」の付く金額は、半期報告書と有価証券報告書からの当社試算です)