自社のECブランドはどうやって売ったのか ── 勤務先の倒産から合計約1.5億円の譲渡、売却後にM&A支援を選んだ理由
「自分のブランドを売りたい。でも何から始めればいいのか。売ったあと、経営者はどうしているのか」。ブランドを持つ経営者が、売却を考えたときに抱く問いです。
この動画では、勤務先の倒産から独立し、複数のブランドを売り、M&Aの支援を仕事に選ぶまでを話しました。売ったときに何が足りなかったかにも、本人として答えます。
この記事の結論は次の4つです。
- 売った金額は、複数ブランドの合計で約1.5億円。ゴルフブランドPuttOUT単体では、2,500万〜3,000万円ほどだったと記憶しています
- PuttOUTは仲介会社を通さず、YouTubeで買い手を募って直接売った。関心を示した7社ほどから1社に決めました
- 当時は知識がなく、手続きを無理やり進めた。やり直すなら資料を先にそろえ、買い手の調査に明確に答える準備をします
- ブランドの価値は決算書に出てこない。それを伝えきれなかった経験から、いまはEC・小売に絞ってM&Aを支援しています
勤務先の倒産から、総代理店のブランドを育てるまで(動画 0:38〜)
最初に勤めた会社が倒産し、自分で稼ぐ力をつけようと独立しました。始めたのは輸入ビジネスで、のちに総代理店のブランドに絞っています。
最初に勤めたのは、地元・秋田の製造業の会社です。社員は300人ほど。製造設備のメンテナンスを担当していたある日、社長が半年後に会社を畳むと話しました。会社は潰れるものなのだと、そのとき知った。
本屋で見つけた輸入ビジネスの本が出発点です。海外の展示会でメーカーと交渉し、日本での独占販売権を得る。そのサンプルを日本の展示会に並べ、小売店や商社から数百個単位の注文を取る。かかるのは交通費と出展料くらいでした。空いた時間にはYahoo!、Amazon、楽天でも商品を売り、2015年ごろに法人にしています。
転機は、創業2年ほどの頃のAmazonのアカウント停止です。月商1,000万円ほどに届き、もっと伸ばそうとしていた矢先でした。当時は転売も多く、この先も続けるのは違うと思った。同じやり方には戻らず、海外メーカーの総代理店(日本での独占販売権を持って売る会社)としてブランド品だけを扱うと決めました。総代理店の契約は、メーカーに連絡して交渉するだけで取れることも意外とあります。2022年までの7年ほどで、扱ったブランドは30以上。自社で立ち上げたブランドもありました。
手が回らなくなり、売ると決めたきっかけ(動画 6:21〜)
ブランドが増えて手が回らず、自分より上手に伸ばせる会社がありそうだと考えました。きっかけは、会社に届く買収の打診です。
2019年から2020年ごろ、私は6ブランドほどを運営していました。カメラ関連、フィットネス器具、鞄、ゴルフ。単純に、手が回っていなかった。
その頃、「御社を買いたい会社がいます」というDMがよく届きました。疑いながらも返信し、情報を出し、契約も結んで進めています。結果は進まず、途中で仲介会社と連絡が取れなくなった。それでも、自分のブランドに関心を持つ会社が確かにいると分かり、今度は自分で買い手を探し始めました。
合計約1.5億円の内訳と、直接売ったPuttOUT(動画 7:43〜)
1.5億円は複数ブランドの合計で、PuttOUT単体では2,500万〜3,000万円ほどです。PuttOUTは仲介会社を通さず、YouTubeで募った相手に直接売りました。
当時の私はYouTubeで発信もしていました。そこで「このブランドを買いませんか」という動画で、ゴルフのブランドPuttOUTの買い手を募りました。規模はそこまで大きくないのに、7社ほどが手を挙げた。話をして1社に決め、2022年に現在のCommerceXグループへ売却しています。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 売ったブランド | ゴルフのPuttOUT、フィットネス器具、鞄など |
| 売った時期 | 2022年を含む1年ほどのあいだ |
| PuttOUT単体 | 2,500万〜3,000万円ほど(私の記憶)。譲渡先は現在のCommerceXグループ |
| 全ブランドの合計 | 約1.5億円 |
| 買い手の探し方 | PuttOUTはYouTubeで募って直接。ほかには仲介会社や、中に仲介役がいるマッチングサイトを使ったものもある |
フィットネス器具のブランドは別の会社へ譲り、行き先はブランドごとにばらばらです。私の手がないと回らないものだけが最後に残り、それも後に少しずつ終わらせました。
「当初は無知だったので、難しいことというよりは無理やりやった感じです。今考えたら結構雑にやったなという感じです」(9:28)
問題は条件の良し悪しより、準備でした。事前に資料をそろえる。買い手の調査(DD=デューデリジェンス。買い手が財務や事業を詳しく確かめる手続き)やインタビューに、明確に答える。当時はどちらも足りませんでした。売る前の準備はEC事業の売却は「決める前」に差がつく ── 最初の3か月でやる3つのことにまとめています。
売ったあとの1年と、国内最大手のM&A仲介会社へ(動画 10:06〜)
次の事業が決まらない1年を経て、M&Aの支援を仕事にすると決めました。経験を積むため国内最大手のM&A仲介会社に入り、2023年から2026年まで、実務に携わりました。
売却後、新しい事業を始めたいのに何も思いつかない時期が1年ほど続きました。ゴルフをしながら考えて出した結論は、M&Aが面白そうだということ。会社を立ち上げた頃の私は稼ぐことしか考えておらず、決算書をまともに読める自信も、会社をいつまでにどうするかというゴールもなかった。M&Aは増えていて、経営者ならどこかで必ず向き合う選択肢です。EC・小売でやってきた経験を生かし、この領域に特化した、信頼されるM&Aのアドバイザーを目指そうと考えました。
ただ、他人の会社の売却を支援した経験はありません。失敗はできない。だから一度どこかで経験を積もうと決めました。売却したのになぜ会社員に、とはよく聞かれます。当時の私は30代前半。大きな会社の優秀なチームで自分がどこまで通用するか、試すならこの年齢がぎりぎりだと思いました。入社のときから、将来はM&Aの事業をやりたいと伝えています。
入社して、常識を覆されました。M&Aは、私が思っていたよりずっと多く行われていた。譲渡したいオーナーと、買収したい会社。それぞれの理由を聞くうちに、世の中にこれだけのニーズがあるのだと知りました。実務の難しさも痛感し、その経験がいまの仕事に生きています。
在籍中に、CommerceXグループの代表と再び縁がありました。やるなら一緒にという話になって立ち上げたのが、CommerceX M&Aです。
独立してから今までの流れです。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 独立前 | 秋田の製造業の会社(社員300人ほど)が倒産 |
| 2015年ごろ | 輸入ビジネスを法人にする |
| 創業2年ほど | Amazonで月商1,000万円ほど。停止を機に総代理店のブランドに絞る |
| 2019〜2020年ごろ | 6ブランドほどを運営し、手が回らなくなる |
| 2022年 | PuttOUTを現在のCommerceXグループへ譲渡。1年ほどで複数のブランドを売り、合計約1.5億円 |
| 売却後の1年ほど | 次の事業が決まらず、M&Aの支援を志す |
| 2023〜2026年 | 国内最大手のM&A仲介会社で実務を経験 |
| その後 | CommerceX M&Aを立ち上げる |
M&Aを良いと思う理由(動画 15:10〜)
M&Aは、大手の傘下で事業をもっと伸ばしたい経営者の望みを叶える選択肢だと考えています。キャリアを最短で上げられるのもM&Aだと、私は思っている。
事業を立ち上げ、2年ほどで上場会社に売る。そこから子会社の代表や親会社の役員に入る道が開けることもあります。上場会社に就職して同じ立場になるには、何十年もかかる。それを望むかは人それぞれです。それでも、大手の傘下で事業がさらに伸びる道を望む経営者がほとんどだと思います。
昔の日本はM&Aが少なく、単独で上場して売上を伸ばすのが当たり前でした。いまは、自社にない資源を持つ相手と組む方が明らかに有利です。たとえば化粧品のブランドが、全国にドラッグストアのチェーンを持つ会社と一緒になる。そのチェーンに一気に商品を広げられます。
買う側にとっても、新規事業を作るよりM&Aの方が速く、事業の立ち上がりが手堅い。上場会社は時価総額(株価に発行済み株式の数をかけた、会社の値段)を上げ続ける必要があり、M&Aなしでは時間がかかりすぎます。
「上場しますという会社や、上場した会社が、投資家に向けてどういう戦略を考えているのか。その中にM&Aという戦略がないと逆におかしいと思われるぐらい、普通になってきています」(17:13)
YouTube、Android、Google Analytics。どれもGoogleがM&Aで手に入れたものです。海外ではM&Aができないと成長できないのが前提で、その波が日本にも来ています。一方で、売る側でM&Aを戦略と考える経営者はまだ少ない。売却には、引退や身売りのような後ろ向きな印象が残っています。
誰に売るかで、結果は変わる(動画 18:03〜)
M&Aは結婚に似ていて、うまくいかないこともあるため、どの会社にどう売るかが大事です。売り手には、自分の人生をこの先どうしたいかから逆算して考えてもらいます。
誰もが添い遂げる夫婦を目指しますが、離婚もある。決めるのは相手だけではありません。いつ売るか。どういうスキーム(取引の組み立て方)にするか。全部(100%)を譲渡して終える以外のやり方もあります。一件ごとに条件が違い、同じものは一つもない。
売り手と買い手のどちらの側に立つ支援かでも、進め方は変わります。違いはM&A仲介とFAは何が違うのか ── 「誰と契約するか」で報酬も利益相反も決まるにまとめています。
中小企業では特に、金額だけでは決まりません。結婚相手を年収だけで決めないのと同じです。人柄、譲渡後の働く条件、会社の文化。金額も含めた条件全体を、買い手も売り手も納得できるように整える。それが私たちの仕事です。
支援する相手をコマース領域に絞る理由(動画 20:14〜)
売り手の良さを買い手に伝えるには、その事業の現場を分かっていることが欠かせないからです。当社は小売・ECとその周辺に絞り、関係のない業種は他社を紹介しています。
対象は小売、EC、EC支援の会社。通販事業者向けに物流やカスタマーサポートを担う会社も含みます。建築や介護のような業種は受けていません。売り手の場合、買い手候補にその会社の良さを伝えなければならない。買い手の場合は、どんな会社を買ってどう成長したいかという戦略から話します。どちらも、事業を知らない人にはできませんし、信頼もしてもらえません。
「決算書には出てこないような、数字以外の情報、ブランドの価値。これをなかなか伝えることができない、きつい思いをしたことがあります」(21:42)
これは私自身が売ったときの経験です。人生はまだ長く、やりたいこともある。会社としても、もっと業績を上げていきます。
この記事のまとめ
- 勤務先の倒産を機に輸入ビジネスで独立し、Amazonの停止を経て総代理店のブランドに絞った
- 売った金額は複数ブランドの合計で約1.5億円。PuttOUT単体は2,500万〜3,000万円ほど
- PuttOUTはYouTubeで募った7社ほどから1社を選び、直接売った。資料と受け答えの準備が足りなかった
- 売却後の1年を経て、国内最大手のM&A仲介会社で2023年から2026年まで実務を積み、CommerceX M&Aを立ち上げた
- M&Aは相手選びと取引の組み立てで結果が変わる。売り手の良さを伝えるには事業の現場の理解が要るため、コマース領域に絞っている
よくある質問
Q. 1.5億円は、PuttOUTだけの売却額ですか。
A. いいえ、複数ブランドの合計です。PuttOUT単体は2,500万〜3,000万円ほどだったと記憶しています。フィットネス器具のブランドは、同じ1年ほどのあいだに別の会社へ譲った。
Q. 仲介会社を通さず、自分で売ることはできますか。
A. PuttOUTは、YouTubeで募った買い手に直接売りました。ただ当時は知識がなく、手続きを無理やり進めた面がある。資料を先にそろえ、買い手の調査に明確に答える準備が要ります。
Q. 売却したあと、経営者は何をしているのですか。
A. 私の場合、次の事業が決まらない時期が1年ほどありました。その後、国内最大手のM&A仲介会社で経験を積み、CommerceX M&Aを立ち上げた。PuttOUTの譲渡先のCommerceXグループで、いまも事業に関わっています。
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この記事の結論は「ブランドの価値は決算書に出てこない。だから売る前に、それを伝える資料と答えをそろえる」です。
売却を考えている方へ。私は自分のブランドを売ったとき、資料の準備も、買い手の調査への受け答えも足りませんでした。まだ売るには早いかと迷っている段階でも、ご相談いただけます。
買収を考えている方へ。当社は、どんな会社を買ってどう成長したいかという戦略の段階から話を始めます。小売・ECとその周辺に絞っているため、事業の現場を踏まえて相手を探せます。
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