EC事業を売るとき、売却額を下げてしまう行動は何か ── 概要書の作り込み、期待値、売る時期の3つ
「初めて事業を売るとき、何をすると売却額が下がるのか」。EC事業の売却を考え始めた経営者が抱く問いです。
ECのプロでも、M&Aは初めてという方がほとんどです。この動画では、売却額を下げてしまう3つの行動と、その避け方を話しました。
この記事の結論は次の4つです。
- 1つ目は、企業概要書の作り込みが甘いこと。魅力が伝わらず、買い手の調査で説明との違いが見つかれば金額と条件が下がります
- 2つ目は、期待値が高すぎること。第三者の評価から離れすぎた条件では、相手先が出てきません
- 3つ目は、売る時期を逃すこと。申し出を見送ったあとに業績が下がり、以前ほど良い条件で売れなくなることがあります
- 進め方は、概要書、期待値、相手先探し、時期の順。時期は、関心を持つ買い手が出てから決めます
初めての売却は、何人かの専門家に相談する(動画 0:20〜)
M&Aには深いノウハウがあり、初めて売るなら専門家への相談が最も大事だと私は考えています。相談の仕方で、売却の条件が大きく変わるからです。
私が自社の事業を売却したときは、M&Aの仲介会社や専門家に相談し、プラットフォームを直接使ったこともあります。1人ではなく何人かのプロに相談したことが、かなり大事だったと感じている。相談先の選び方はEC・D2Cの会社を売るなら、どこに相談すればいいか ── 初めてならM&Aの専門家。売却先を探す5つの方法で話しています。
1つ目:作り込みの甘い企業概要書(動画 1:16〜)
作り込みの甘い企業概要書(買い手に自社を紹介する資料)は、魅力が伝わらず、調査の段階で金額と条件を下げる原因になります。EC事業の買い手が何を知りたいのかを盛り込む必要があります。
自分で相手先を探すとき、AIを使って簡単な概要書を作る方も多くいます。今のところ、それだけでは出来がかなり甘いと私は感じている。
作り込みが甘いときに起きることの1つは、魅力が伝わりにくくなることです。相手が何を欲しているのかが分からず、響く提案ができない。
もう1つは、関心を持ってもらい、先へ進んだあとに起きる。数字を事前に資料へまとめていない会社は、DD(デューデリジェンス。買い手が財務や事業を詳しく確かめる手続き)で食い違いが見つかることがあります。
「事前に資料に数値とかがしっかりとまとまっていないと、DDに進んで監査をしたときに、あれ、これなんか言っていたことと違います、みたいなことが出てきたりする」(2:09)
その結果、もともと希望していた金額や条件が次々に下がっていきます。最終的に、かなり下がった売却価格でM&Aをすることにもなりかねない。
2つ目:高すぎる期待値(動画 2:35〜)
第三者の評価から離れすぎた期待値では、相手先が出てこず、M&Aが成立しません。売る前に、自分の期待値を一般的な評価と比べておきます。
これくらいの条件なら売りたい、こういう相手になら売りたいという希望は、誰にでもあると思います。問題は、その理想が高すぎるときです。結婚でも、お金持ちで背が高く、美男美女でという理想だけを求める人は、最終的に何も手に入らずに終わることがよくある。
結婚相手を探すときは、自分がどう評価され、どれくらい求められるかに、年収などの一定の基準があります。会社の一般的な評価は、仲介会社やいろいろな専門家が出してくれる。その第三者の評価から、自分の期待値が離れすぎていないかを確かめます。
M&Aをしたい理由や目的は人それぞれで、目的によって進め方も変わります。
「そもそも相手先が出てきてM&Aが成立しないと、やる行為ってのは全て無駄になってしまうので、成立しないといけない」(3:40)
成立させるには、どれくらいの条件で相手先を探すのがよいかを、相談しながら決めることが大事です。期待値が高すぎる会社には、相手先がまったく出てこない。関心を持つ買い手が出てきても、価格が高すぎて難しいと言われます。
1年後くらいに売りたいので今は期待値が高い、という前提を踏まえた条件ならかまいません。今すぐ売りたいのに希望額が高すぎる状態は、相手先がなかなか見つからず、双方にとって良くありません。
3つ目:売る時期を逃す(動画 4:34〜)
買い手の申し出を見送ったあとに業績が下がり、以前ほど良い条件で売れなくなることがあります。M&Aは、売る時期がとても大事です。
業績も商品も良く、引く手あまたの会社には、買収したいという話が来ます。だからこそ、いつ売るかで悩む。たとえば買い手企業から、1億円で買いたい、2週間後くらいまでに回答がほしいという申し出が来る。1億円か、まだ早いかもしれない。そう悩む場面は必ず来ると思います。何社かから意向表明(買いたいという意思と条件を示すこと)が出ることもある。
「その時に、意思決定として何を軸にするのかというところが、すごく大事」(5:04)
たとえば、今はやめておこうと一度見送る。その後に業績が下がり、以前もらっていた条件ほど良い条件では売れなくなることがあります。時期を間違える、判断を見誤る方は多くいる。冷静に判断するには、準備期間をきちんと取るのが最もよい方法だと私は考えています。
売るか待つかの考え方は伸びているうちに売るか、待つか ── 売ると決める前に確かめる2つの問いにまとめています。
概要書、期待値、時期の順に決める(動画 6:17〜)
専門家の監修で数字もまとめた概要書を作り、期待値を確かめてから相手先を探し、時期は買い手が出てから決めます。今の時点で、私が効率的だと考えるM&Aの進め方です。
| 行動 | 何が起きるか | 避けるために |
|---|---|---|
| 概要書の作り込みが甘い | 魅力が伝わらず、響く提案ができない。DDで説明との違いが見つかり、希望の金額と条件が下がっていく | EC事業の買い手が知りたい要素と数字をまとめた概要書を、専門家の監修で作る |
| 期待値が高すぎる | 相手先が出てこない。関心を持った買い手にも、価格が高すぎると言われる | 第三者の評価から離れすぎていないか、実際に相手先が出そうかを確かめ、相談しながら条件を決める |
| 売る時期を逃す | 申し出を見送ったあとに業績が下がり、以前ほど良い条件で売れなくなる | 準備期間を取り、何を軸に決めるかを考えておく |
私も自社のD2Cブランドを売ったとき、決算書に出ないブランドの価値を伝えきれませんでした。いまはEC・コマース領域に特化したM&A支援の会社、CommerceX M&Aを運営しています。
この記事のまとめ
- 初めての売却では、1人ではなく何人かの専門家に相談する
- 作り込みの甘い概要書は、魅力が伝わらず、DDで金額と条件が下がる原因になる
- 第三者の評価から離れすぎた期待値では、相手先が出てこない
- 申し出を見送ったあとに業績が下がり、以前ほど良い条件で売れなくなることがある
- 概要書を作り、期待値を確かめてから相手先を探し、時期は買い手が出てから決める
よくある質問
Q. 概要書は、AIを使って自分で作ってもよいですか。
A. AIで簡単な概要書を作る方は多くいます。ただ、今のところそれだけでは出来が甘いと私は感じている。EC事業の買い手が知りたいことと数字をまとめたものを、専門家の監修で作ることを勧めます。
Q. 自社の評価は、どこで分かりますか。
A. 会社の一般的な評価は、仲介会社やいろいろな専門家が出してくれます。その第三者の評価から、自分の期待値が離れすぎていないかを確かめる。どれくらいの条件で相手先を探すかは、相談しながら決めます。
Q. 買い手からの申し出には、すぐ答えるべきですか。
A. 何を軸に決めるかを、先に考えておくことが大事です。見送ったあとに業績が下がり、以前ほど良い条件で売れなくなることもある。冷静に判断できるよう、準備期間を取っておきます。
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この記事の結論は「概要書を作り込み、期待値を確かめてから相手先を探し、売る時期は買い手が出てから決める」です。
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