M&Aの手数料はなぜ高いのか ── 成約まで報酬が出ない仕組みと、払った分を回収する考え方
「M&Aの手数料は、なぜこんなに高いのか」。SNSでもよく見かける声です。仲介会社によっては、最低手数料だけで2,000万円を超えることもある。ほかのサービスの手数料と比べると、高いのは確かです。
この動画では、手数料が高くなる仕組みと、払った分を回収する考え方を話しました。私は自分のD2Cブランドを売った経験があり、いまはEC・コマース領域に絞ってM&Aを支援している。売る側と支援する側の両方の立場から書きます。
この記事の結論は次の4つです。
- 手数料の元は、まず金額で取る。売り手にとって最後の対価は、税引後の手取りと良い相手との成立です
- 手数料が高いのは、成約するまで報酬が基本的に0の仕事だから。資料づくりから買い手の調査まで、終わるまで1年ほどかかることもある
- 料率は譲渡する株の価格で決まる形が多く、手数料が低くても質が悪いとは限らない。見るのは、多くの買い手に当たれるか、逆提案があるか
- 手元に残る金額の目安は、最初の段階で聞く。成約率は会社によって15〜40%ほどです
手数料の元は、手元に残る金額で取る(動画 0:41〜)
手数料の元を取れたかは、手数料を払っても高く売れたか、安く買えたかという金額で判断します。取引を成立させること自体にも価値があります。
専門家に頼み、自分で売るより手数料以上に高く売れた。それが手数料に見合う価値です。買い手も同じで、2,000万円分安く買えたならそれが価値になる。売りたくても売れない、買いたくても買えないことも起きるため、欲しい事業を買わせてくれる、売ってもらえるという価値もあります。
手数料がかかること自体を嫌がる考え方は、私はあまり良くないと思っています。
「売り手側からすると、最終的にいくら税引後の手元にお金が残るかと、いい相手が出てきていいM&Aが成立できたか。これが一番最後の対価だと思います」(1:49)
金額と、良い相手を連れてきてくれたこと。この2つに満足できるかが大事で、分かりやすく言うと最初は金額で判断するのがよいと考えています。
手数料が高いのは、成約まで報酬が出ない仕事だから(動画 2:24〜)
手数料が高いのは、仕事が難しく、成約するまで報酬が基本的に0で、ある程度高い報酬でないと見合わない構造だからです。支援をしてきて、私自身そう感じています。
売りたいという相談が来ると、企業概要書(買い手に会社を紹介する資料)を作ります。ここまではLP(商品の販売ページ)の制作会社に近い仕事です。違うのは、ビジネス・税務・法務と多岐にわたる知識が要り、間違えられないこと。
| 段階 | 支援する側がすること |
|---|---|
| 資料づくり | 話を聞いて資料を受け取り、企業概要書を作る |
| 相手探し | 何百社という買い手候補のリストを出し、1社ずつ連絡する。関心を持った会社とは1社ずつ面談する。200社と面談すれば200時間 |
| 成約まで | トップ面談(売り手と買い手の経営者が会う場)や、買い手の調査(DD)などを進める。終わるまで1年ほどかかることもある |
| 報酬 | 成約するまで基本的に0。結婚の寸前のような段階で、やはりやめるとなることもある |
その間も営業の費用や人件費はかかり、回収するには成約が要る。成約までお金が出ていく一方なので、キャッシュフロー(手元のお金の出入り)も悪く、リスクも高い仕事です。
「キャッシュフローもすごく悪いしリスクも高いので、ある程度高い報酬をもらわないと見合わない業務としての構造があるので、高くなっています」(3:57)
売却にかかる期間の内訳はEC事業の売却は何か月かかるのかにまとめています。
買い手の側では、譲渡を考える会社を探し、買収の戦略を考え、買収して企業の価値を上げていきます。これも難しく、リスクは高い。この難しさは、やってみると最もよく分かると思っています。
安い会社があるのは、規模と複雑さが違うから(動画 4:59〜)
月額制で売り手と買い手が集まる場だけを用意する会社や、面談の設定ごとに費用をとる会社もあります。差が出るのは、扱う規模が違うためです。100億円の譲渡と500万円の譲渡では、やることのレベルも業務も違う。
規模だけの話ではありません。ビジネスモデルの複雑さでも手間は変わり、小さな事業譲渡でも大変なものはある。本来は、実際にやった業務の量に応じて報酬をもらうのが公平だと思います。ただ、それを測るのは難しいので、料金の決め方はどうしても保守的になります。
見るのは、アドバイザーが逆提案してくれるか(動画 6:08〜)
売り手や買い手が自分で多くを用意するより、アドバイザーの側から準備や改善を逆提案してくれるかが大事です。丸投げの方もいますが、何を用意すればよく見せられるかを伝えるのはアドバイザーの仕事です。
私は財務も含めて会社の情報を全部見て、ここをこう変えると利益が改善する、とよく助言している。
担当が合わないと感じたときに変えるのも、十分ありだと思います。私も経営者として税理士に依頼してきました。決算の数字をまとめるだけの人、毎月の定例で丁寧に数字をまとめる人、節税の案や逆提案を出してくれる人がいる。税務が専門でない経営者には、提案してくれる人のほうがうれしいはずです。
M&Aでも同じです。企業価値を上げるにはこうしたほうがいい、相手はここを必ず突っ込んでくる。それを先に伝え、体制と資料を準備しておく。こうした提案があるかで見極めるのが大事だと考えています。
身内同士で売買するときも、条件は相談しておく(動画 7:48〜)
手数料を抑えようと身内同士で株を売買するときも、依頼するかは別にして、条件は専門家に相談しておくのがよいと考えています。間に人が入らない分、トラブルが増えることもあるからです。
身内同士でやろうと決めても、最後に契約書は作ります。それを弁護士だけに見てもらうのも1つの方法です。それでも、こういう話があるのだけど、と相談はしておいたほうがいい。話している条件が一般と比べてかなり安く、別の相手と進めたほうがよかったとあとで後悔することもあるからです。
ここで書いたのは一般的な話です。自社の場合の進め方や契約の中身は、弁護士などの専門家に確かめます。
料率は譲渡する株の価格で決まる形が多い(動画 8:27〜)
手数料の料率は、譲渡する株の価格の区分ごとに決まる形が多く、業務の量では決まりません。同じくらいの規模の会社どうしで比べると、1社だけ極端に安いことはあまりないと見ています。
多くの会社は、レーマン方式(金額の区分ごとに料率を決めて合計する計算)の料率表を持っています。株価5億円以下の部分は何%、5億円から10億円の部分は何%という決まりです。料率を掛ける元の金額(基準となる価額)は会社によって違うこともあり、比べ方はM&A仲介とFAは何が違うのかにまとめました。
規模の小さな支援会社には、500万円ほどで受けるところもあります。当社は最低500万円で受けており、譲渡する株の価格が一定を超えると、それより多くいただきます。
「低いからと言って質が悪いかというと、そうではないと思います」(9:16)
大事なのは、どれだけ多くの買い手に当たれるかといった中身です。提案する買い手の数と売却額の関係は、EC・D2Cの会社を売るなら、どこに相談すればいいかで話しました。
成約率は15〜40%ほど(動画 9:30〜)
依頼を受けてから成約までたどり着く割合は会社によって大きく違い、幅広く言うと15〜40%ほどです。半分以上は、どこかの段階で流れます。
理由の1つは、売り手が売らないと決めることです。相手先を探してみましょうと始めても、今でなくてもいいか、やはりやめようか、となる方もいる。こうした例も混ざって、全体ではこのくらいになります。
成約しないものからは手数料を受け取れません。それでも一定の仕事はしている。成約するものとしないものを均して、料金が決められています。着手金がない料金で成約しなかった分の費用がどう扱われるかは、M&Aの着手金は要るのかで整理しました。
最初に聞くのは、手元に残る金額(動画 10:34〜)
手数料のほかに確かめるのは、着手金の有無と、最終的に手元に残る金額です。手取りの目安は、最初の段階で聞くのが大事です。
着手金をとる会社もあるため、それは聞いたうえで進めます。初めて売る方に分かりにくいのは手取りです。株価がいくらで、税金がいくらか。経営してきた年数が長いと退職金を受け取ることもある。そこから支援会社への成功報酬を差し引きます。手取りが示されないまま進み、あとになって、この手取りでは売れないとやめる。そういう話をよく耳にします。
当社は手取りの計算を出しています。税理士ではないため、税金を正確に差し引いた額までは出せない。それでも、およその金額は最初のうちにお話しします。
この記事のまとめ
- 手数料の元はまず金額で判断する。売り手にとって最後の対価は、税引後の手取りと良い相手とのM&Aの成立
- 手数料が高いのは、成約まで報酬が基本的に0の仕事だから
- 料率は譲渡する株の価格の区分で決まる形が多い。手数料が低くても質が悪いとは限らない
- アドバイザーは、準備や改善を逆提案してくれるかで見極める。身内同士の売買でも条件は相談しておく
- 成約率は会社によって15〜40%ほど。手元に残る金額の目安は最初の段階で聞く
よくある質問
Q. M&Aの手数料は、なぜ高いのですか。
A. 成約するまで報酬が基本的に0の仕事だからです。終わるまで1年ほどかかることもあり、その間の人件費や営業の費用は支援する側が負う。ある程度高い報酬でないと見合いません。
Q. 手数料が安い会社に頼んでも大丈夫ですか。
A. 手数料が低いからといって、質が悪いとは限りません。規模の小さな支援会社には、500万円ほどで受けるところもある。大事なのは、どれだけ多くの買い手に当たれるか、準備や改善を逆提案してくれるかです。
Q. 契約の前に、手数料のほかに何を確かめればいいですか。
A. 着手金の有無と、最終的に手元に残る金額の目安です。株価から税金と成功報酬を差し引き、退職金も含めていくら残るかを最初に聞く。分からないまま進むと、あとで売却をやめることになりかねません。
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この記事の結論は「手数料の元は、最終的に手元に残る金額と、良い相手との成立で判断する」です。
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